ごんす

パスト ライブス/再会のごんすのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.3
戻らない時を思う懐かしさや違う選択をしていたら…と思うことはとてもよく分かる。
今生きている場所を捨ててあの時止まった時間を動かそうという気持ちなどはないこともよく分かる。

幼馴染み二人の立ち位置、見ている方向などで気持ちの変化を表す演出は素晴らしい。
12才のノラとヘソンが一緒に歩いて帰り別れる後ろ姿が忘れていた頃に差し込まれるのも苦しくなる。
ラストシーンも堪らなかった。

ノスタルジックな気持ちにさせられる一方で米国で劇作家としての成功を目指すノラにとって「グリーンカード」が必須であったことなどかなり現実的でハッとする。

夫がノラを愛しつつも、どこか自分には彼らの絆に敵わないだろうという寂しさを感じさせる。
自分の好みのタイプの映画だとこの流れから激しい夫婦喧嘩になりどちらかがアウトなディスをしたりするのだけどそういうことはなかった。
夫は「僕は物語なら再会した運命の二人の邪魔をする米国人だ」と自虐しつつも根底にはノラは本当に自分を愛しているのか、本当は自分以外の方が良かったのではないかと考えている所がありそう。
奇しくもノラに会いにきたヘソンの方も付き合っていた彼女とは「もっと収入がないと幸せにできない」「結婚するには自分よりもっと相応しい人がいる」と話していてこの映画の男性達からは優しさや繊細と同時に自信の無さを感じ共感する所も多かった。

しかし夫を交えて三人での食事中、韓国語で二人だけで盛り上がってしまい放置されている夫は見てられなかった。
でも夫のキャラ造形としてそれを怒ったりしないということを見せるのはなかなか意味のある描写だったのかも。
主体性を持った女性の映画であると同時に相手に寄り添う柔らかな男性の魅力も描けているのが良かった。

劇場メモ。
近くの席にいた女性のお客さん眠さに負けてついに積極的に寝ることを決めたと分かる体勢を取ったのが見えて面白かった。

コンディションなのか映画がつまらなかったのかどっちなのか凄い気になって帰る時チラッと見てみたら凄くスッキリした表情だった。
途中ダルくて寝たけどまぁ良かった!の顔なのかよく寝てスッキリしたのかどっちなのか更に気になった。
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