カイザーソゼ

パスト ライブス/再会のカイザーソゼのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.0
思った以上にナヨっとした話で全然共感できず。

とにかく男性主人公がナヨいというか、なんか一緒になる道あったよね〜と匂わせつつはっきりもしないし、特段自分に自信があるわけでもなく、うーんどうしたかったん?っていう。

女性主人公は、どの道でも幸せだったし私は求められたよねっていうことを確認したかったのかなあという具合。なめんなよ。女性側から積極的に追いかけてるというより、今の夫からも求められ、初恋の男性からも求められていることを確認して承認を得たいのかなって感じに見えた。
いつでも欲張りであり、全部欲しいというところは一貫していて良いけどね。
でも、なぜラストは泣いたんだろう。そんなに彼(初恋の相手)に想いがあったとは1mmも感じないんだよな。なんか、いろんな未来があった中で明確に捨てたなあいつとの未来ってことに泣いたのかな?まったくわからない。ちょっと自己耽溺が過ぎるのでは?

一方で、自分が移民じゃないしそういう複数の未来を感じたことがないからこう考えてしまうのかもとは思う。これはアメリカで働いているアジア人がみると全然違う景色かもしれない。これだけは留意して書いておく。

戻る。12年、24年越しに会うということ、互いが違うことを理解しながら、いつの世かまた一緒になれればいいねと願うこと、と書けば聞こえはいい。ただ、正直そこに対しての必死さが双方から感じられないから、12年、ないし24年みたいなことの重みがない。画面に現れていないところでの重みづけが感じにくいのは明確に欠点だと思う。その間どんだけ努力したんよ?facebookで探しただけ?何回探したの?コメントしただけ?ずっと考えてたふうにしては合間の作業感強いんだよな。どちらも。いなきゃいないでそれぞれの未来やっときますわっていう。

ちなみに、年月感でいうと、ビフォアサンライズ、ビフォアサンセットみたいに、リアルに年月を重ねて本人のオーラ自体に歳をとらせて見せるというやり方もあるわけです(壮大すぎるけど)。そういう「時間の経過」についての覚悟が弱いというか、12年後って書けば12年後なんですかねえというのが不思議。スキップ感。それじゃ重みないよ。

初恋で、そんな好きだったら手紙書けよ。というかそもそもお前(女性)は完全に忘れてたよね。男性からしたら24年なんだが、女性からしたら12年+αっていう感じなんですよね。
それで、24にもなって、ソウルにこいだの、ニューヨークにこいだの、行ってから喧嘩しろよ。とも思う。まあ、付き合っているわけでもないし、運命が〜という割に軽さを感じてしまう。
運命、輪廻、イニョンというからには、よしながふみ「環と周」くらいの気概を見せて欲しい。

すれ違いとか運命というならばもうちょっと必死に頑張って欲しいすね。その上で何かに翻弄されるならまだしも、割と自分達の積極的な意思(強制力のない)でここまできたでしょ、君たち、と思うとまあそりゃそうじゃないって感じ。

それにしても、夫を横に置いておきながら韓国語でぐちゃぐちゃ話すっつーのは本当に失礼な奴らだなと思う。その自分達への甘やかしというかだるだるなところが共感できないんだわと思った感じ。

終始、男性の魅力が、韓国っぽいノスタルジーでしかなくて、別にそいつじゃなくてもよかった感が本当に強い。かなり記号的である。それもまたつまらない。間がよかった、じゃねえよ、話がつまんねーから続かねーだけだろ。

終始半端な男子の好意をギリギリ最大限感じつつ自尊心を満たす人の話っぽく見えてしまって(そうじゃないと思いたいけど)、そういうことなのかなあっていう。
中高時代の、元カレ元カノと飲むそのへんの話と何が違うの?って思う。


追記:ライムスター宇多丸さんのラジオでの評価を聞いて、ちょっとなるほどなと思ったのは、恋愛というところにフォーカスが当たってるというよりも、過去・現在・未来というどの時制に向き合っているか?というもっと大きな視点の話なんだよねという話はなるほどそうかもと思いました。そう考えると、恋愛的なコミュケーション・振る舞い、それ単体に気合が入ってないのもちょっとわかる。