しらすごはん

コット、はじまりの夏のしらすごはんのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
5.0

2020年代の珠玉の名作誕生。

函館にも今年届きました。

予告編のルックだけみたら、
少女の心の成長を描く物語と思うでしょう。

ウェルメイドでもいいから、観てみよかなって。

確かに、9歳の少女の視点からストーリーは進みます。


1981年の夏、アイルランドの農園が舞台。

大家族の中で、主人公のコット(キャサリン・クリンチ)は居場所がありません。

しょっちゅう夜尿をしてしまいます。

勉強も苦手。

ゲール語話者のコットは、英語をスムーズに読めない。

父親からは「はぐれ者」と呼ばれます。

〔ちなみに、実父は自己中の最低男〕

〔父役の役者さん、憎らしく演じてます〕

母は愛情深いものの、出産を控えており、また他の家族の世話で追われ、コットまで十分面倒をみられません。

姉弟のなかコットだけ、夏休みの間、遠縁のキンセラ夫妻に預けられることになります。

母のいとこのアイリンおばさんはやさしい。

でも、どこか影を引きずっているよう。

ショーンおじさんはそっけない、最小限の声かけしかしない人。

“ここでそんなに怒るの?“っていうところで、おじさんは激怒します。

「コットのために服を買ってやろう」とおじさんから提案されたら、おばさんはなぜか泣いてしまう。

コットはしばしば戸惑う。

それでも、コットと夫妻は、心の距離を次第に近づけていきます。

キンセラ夫婦に大事にされ、表情も豊かになります。

アイルランドの農場の風景、夏の光のなか、心が通じ合う描写の積み重ねがとにかく素晴らしかったです。

イモの皮むき、牛舎の掃除、水汲み、郵便受けへのタイム走、なんてことない場面がどれも素敵でした。

ひかえめなピアノ曲も良かった〜

後半、夫妻に悲しい事情があることを少女も感知しました。

〔それでおじさん怒り、おばさんは涙ぐんでたんだ〕

そして、とうとう夏休みが終わります。

コットは、元の家に帰らなくてはなりません…


コットが走るシーン、映画的ラストに心が動かされます。

そして、キンセラ夫婦の物語でもあったことに気づきます。

この幕切れの後、コットとキンセラ夫妻がどうなっていくか、みなさんはどのように想像されましたか。
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