2020年代の珠玉の名作誕生。
函館にも今年届きました。
予告編のルックだけみたら、
少女の心の成長を描く物語と思うでしょう。
ウェルメイドでもいいから、観てみよかなって。
確かに、9歳の少女の視点からストーリーは進みます。
1981年の夏、アイルランドの農園が舞台。
大家族の中で、主人公のコット(キャサリン・クリンチ)は居場所がありません。
しょっちゅう夜尿をしてしまいます。
勉強も苦手。
ゲール語話者のコットは、英語をスムーズに読めない。
父親からは「はぐれ者」と呼ばれます。
〔ちなみに、実父は自己中の最低男〕
〔父役の役者さん、憎らしく演じてます〕
母は愛情深いものの、出産を控えており、また他の家族の世話で追われ、コットまで十分面倒をみられません。
姉弟のなかコットだけ、夏休みの間、遠縁のキンセラ夫妻に預けられることになります。
母のいとこのアイリンおばさんはやさしい。
でも、どこか影を引きずっているよう。
ショーンおじさんはそっけない、最小限の声かけしかしない人。
“ここでそんなに怒るの?“っていうところで、おじさんは激怒します。
「コットのために服を買ってやろう」とおじさんから提案されたら、おばさんはなぜか泣いてしまう。
コットはしばしば戸惑う。
それでも、コットと夫妻は、心の距離を次第に近づけていきます。
キンセラ夫婦に大事にされ、表情も豊かになります。
アイルランドの農場の風景、夏の光のなか、心が通じ合う描写の積み重ねがとにかく素晴らしかったです。
イモの皮むき、牛舎の掃除、水汲み、郵便受けへのタイム走、なんてことない場面がどれも素敵でした。
ひかえめなピアノ曲も良かった〜
後半、夫妻に悲しい事情があることを少女も感知しました。
〔それでおじさん怒り、おばさんは涙ぐんでたんだ〕
そして、とうとう夏休みが終わります。
コットは、元の家に帰らなくてはなりません…
コットが走るシーン、映画的ラストに心が動かされます。
そして、キンセラ夫婦の物語でもあったことに気づきます。
この幕切れの後、コットとキンセラ夫妻がどうなっていくか、みなさんはどのように想像されましたか。