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コット、はじまりの夏のalyssaのレビュー・感想・評価

コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)
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大家族、一応誰ひとり存在は欠けていないものの、心が共にあらずで、一緒にいても孤独を感じ、除け者にされているコット

たった2人、ささやかで慎ましい生活を送るアイリンとショーン

コット家族宅では弟の泣き声が絶え間なく聞こえ、アイリン・ショーン宅では穏やかな静寂に牛の鳴き声が馴染む

親子関係や兄弟関係のなかで、存在が当たり前になりすぎたり、互いを理解する努力さえも怠ったりことはよくあることだと思うけど、

そんな、あるようでない「家族」という居場所を飛び出しても、適度な距離感で、愛情を惜しみなく与えてくれて、自分をひとりの人間として尊重してくれている、そんな存在は本当にありがたい
気づくと、自分の叔父叔母を重ねて観ていた

「この家で秘密は無しよ」なんて言っても、2人という単位の関係のなかには、それぞれ共有している秘密がある

「沈黙は悪くない。たくさんの人が沈黙の機会を逃し、多くのものを失ってきた。」
自己主張できるだけが勝ちではないんだと、
その場だけの気休めの肯定ではなくて、子供だからと決めつけずに、公平な目で見ているからこそできる、コットの心にそっと勇気の火を灯すような揺るぎない肯定

そして、
なんで家族って外に家族を紹介する時、不必要なまでに下げてしまうんだろう

映像が美しくて、自然の音やアイルランド語の独特な音に身を委ねて物語を傍観しているつもりが、無意識に重ねてしまっているし、気づくと心がいろんな感情で溢れているような、そんな映画だった
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