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アンダーカレントのhirobeyのネタバレレビュー・内容・結末

アンダーカレント(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

井浦新と永山瑛太は、先日観たばかりの「福田村事件」でも共演していた。

今泉力哉監督の作品。監督の作品は「街の上で」「かそけきサンカヨウ」「ちひろさん」くらいしか観ていない。今回、初めて劇場鑑賞となった。

日常の切り取りが上手い監督。女優さんも上手く活かす印象。本作も、真木よう子がいい。じっと一点を見つめる目が良かった。

幾つも印象に残るシーンがあった。
・何回か出てくるかなえが水中に沈んでいくスローなカット。同じようでみんな違う。真横からのアングル。上からの明かり。このシーン🎬どうやって撮っているのか?何回トライしたのか?

・かなえが銭湯の清掃を終えて風呂に浸かっている遠影。男湯の堀との会話。かなえの問いに何も答えず湯を出る堀に、動揺するかなえ。思わず顔を湯につけるシーン。めちゃ可愛い。

・康すおん演じるタバコ屋のおやじ。帽子、眼鏡、下駄、紺の作務衣、なかなかオシャレ。将棋はめっぽう弱い「角が効いてます」「二歩です」で笑ったが、やはりバス停での堀との会話シーン。そして、軽快な足取りで立ち去る後姿。

・リリー・フランキー扮する怪しい探偵の山崎の登場シーン。サングラス🕶️して寝てるって。愛車にも珈琲にもこだわりが有りそう。あそこで"裏切り者の旅"歌う神経も。

・何度も出てくる川沿いの道を愛犬と散歩するかなえ。やはりラストシーン。微妙な距離をおいて続く堀の後姿。追いついて欲しいような違うようなかなえの後姿。愛犬がまたいい絡みをする。なにこのラブちゃんの名演。

・井浦新のちゃぶ台で食事するシーン。正座って最近あまりしなくなった。ARATA時代の「蛇にピアス」が強烈だったけれど、ドラマ「アンナチュラル」や「最愛」も良かったし、「福田村事件」も。とにかく繊細な役柄が似合う俳優。本作でも流石。

・時々聞こえてくるドーンという低い心拍の様な音。そして、美しいピアノの旋律。

・シーンの切替でのブラックアウト。これも、観ている人を不安にさせるような微妙な長さ加減。

*****

言葉では本当の気持ちを表現することは出来ない。そう思うことがよくある。些細なことで言い争いになって、感情的な言葉を発する。でも、それが本心なのだろうか。或いは、良かった、楽しかったという肯定的な言葉も、本心は分からない。好き、嫌いという感情なら尚更表現が上手く出来ない。人をわかるっていうのは難しい。自分のことでも、なぜこんなことをと思うこともあるのだから、近しいはずの家族であっても。他人なら尚更。それでも、社会的には関係を成立させるために、みんな表面的に上手くやろうとしている。それが大人だと言われたりする。時々、それが破綻する爆発する。
深層心理をテーマにした本作。
なかなか深い…。
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