広島カップ

波紋の広島カップのレビュー・感想・評価

波紋(2023年製作の映画)
4.2
東京郊外の住宅街に住む中流家庭の中年夫婦の話。
一人息子と要介護状態の夫の父親と同居している二人はすこぶる仲が悪い。
東日本大地震が起きた後のある日突然夫が家出をしてしまう。程なく父親は他界し息子は九州に職を見つけて出て行き一人になった妻は怪しい宗教に凝る。
そんな状況の折、出て行った夫が唐突に帰って来て夫婦間に再びさざなみが立ち、波紋が広がる。

更年期を迎えている妻はストレスの塊となり、やたらと神経質にプルプルして目が尖りキレそうになる。筒井真理子の鬼気迫る演技が見事だ。
また家族内において追い詰められて身の置き場がなくなった夫を演じた光石研の演技も素晴らしくて、同じく家庭内では肩身の狭い思いをしている当方としては身につまされる。

"人の不幸は蜜の味"というが、こうした人の家族の窮地をコメディにしてしまう荻上直子監督。かなりドロリとして苦味のある蜜をかけ、そして時にはホラーッぽくもある笑いには感心した。

彼らの状況をこんな笑いにしていいのだろうか?
一歩間違うと悲劇になってしまいそうになる彼らを、既の所で喜劇側に持って来ている。笑いにしないではいられない悲惨な状況をそこはかとなく見事にコメディにしている。
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