tkyk

怪物のtkykのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

三幕構成によって歪さや上手くなさが感じられる作品だった。特に保利の描写は全くフェアでないように見えた。
第一幕では粗野な態度が目立ち、教師失格な人物として描かれるが、第二幕では生徒思いの誠実な教師としての姿が示される。この間のギャップを埋めたり、誠実だったはずの保利が何故変貌したのかを示したりする場面があまり無いので第一幕と二幕の違いに説得力が無かった。

本作ではテーマの不明瞭さも気になった。第三幕は同性愛に近い物語を語っているが、一、二幕では事実と伝聞の不一致が人間の醜悪さや執着心を明らかにする物語と言える。
このふたつのテーマが共通の要素や対になる要素を含んでいたら作品全体の意義が明確になると思うがそういった事は無いため、作品の構成に必然性が感じられなかった。それどころか一幕の場面の真相を第二幕、三幕で伏線として回収する点のみが浮き上がっており、作品の面白さが伏線回収のみに託されているようだった。

本作で特筆すべき点としては学校でのいじめ描写である。当然加害者はいじめだとは思わず、「ドッキリ」と思っていじめをする。その点で非常にリアルに感じたと共に日本のテレビ的な笑いが如何に加害性に満ちているかも実感した。

音楽や演技は良かったがイマイチ構成がはまっていないように感じる作品だった。
tkyk

tkyk