ミシンそば

"Sr." ロバート・ダウニー・シニアの生涯のミシンそばのレビュー・感想・評価

4.1
これは単純に面白いドキュメンタリー。
「パトニー・スウォープ」が最近ようやく本邦初公開されたくらい、日本では知名度低すぎなロバート・ダウニーSr.の作品をとにかく観たくなる。
――ただ、ちょっとだけ観せてくれる邦題さえ未決定なそれらの作品群、モラルが欠けてたり前衛的に過ぎたり、明らかにラリってる時に撮っただろって作品ばっかで、変な映像作家だなあ!って思うこと必至だ。

2019年からシニアが死去する直前の2021年までの合計3年間、密着しつつシニアも並行して当作内で使うカットを撮っていたという結構特異な、だけど映画に全てを捧げたシニアならば当然とでも言うべき変わった構成で話は進む。
ちょっとだけ観れるシニアの過去作と、挿入されるシニアカットを見比べると、パーキンソン病で衰えてていても全く映画作家としての創作意欲は衰えていないことが分かるくらい、昔のシニア作品そのままのカットを見せてくれる。

MCUなどの作品群への出演を経て、今やハリウッド一の俳優となったジュニアの人生は、いい意味でも「悪い意味でも」シニアありきなんだな。
と言うことも思い知らされる。
ジュニアの過去の薬物依存と逮捕歴、浮沈、「悪い意味でも」シニアの人生に与えた影響が大きいであろうことを、この映画は包み隠さず伝えてくる。
そしてシニア本人もジュニアに負けず劣らず波乱万丈の人生を送っていて、なるほど、これは映画の題材に充分なり得ると非常に納得(そして、映画作家としてそれを彩りたいというシニアの考えもよく伝わる)。

ジュニアを最近大作映画で見かけないと思ったが、このドキュメンタリー撮影と、死にゆく父との日々を優先していたのね……。
それは仕方がないよ。