ぶみ

ロスト・フライトのぶみのレビュー・感想・評価

ロスト・フライト(2022年製作の映画)
4.0
その事故は始まりに過ぎなかった…

ジャン=フランソワ・リシェ監督、ジェラルド・バトラー主演によるアクション。
悪天候により反政府ゲリラが支配する無法地帯の島に不時着した旅客機の機長や乗客等の姿を描く。
主人公となるトランス機長をバトラー、同機で移送されることとなった犯罪者・ガスパールをマイク・コルター、副機長をヨソン・アンが演じているほか、ダニエラ・ピネダ、トニー・ゴールドウィン等が登場。
物語は、シンガポールから東京を経由し、ホノルルへ向かうトレイルブレイザー119便がフィリピン沖上空で嵐と落雷により電気系統が故障したことにより不時着を決意とするという航空パニックものとしてスタート、特に着水するか、はたまた孤島に不時着するのか、ギリギリまで究極の判断が求められる機長等の姿は、実話ベースとしたクリント・イーストウッド監督『ハドソン川の奇跡』を彷彿とせるものであり、ここまででもなかなかスリリング。
そして、不時着した先が、フィリピンのスールー海に無法地帯として実在するホロ島だったことから、反政府ゲリラに乗客等が人質が取られてしまったため、今度はいかにして島から脱出するか、人質を救出するかというサバイバル・アクションに一気に舵を切っていくため、一粒で二度美味しい展開に。
特に、中盤のサバイバルについては、トランス機長と移送中のガスパールという対照的な二人が行動をともにするというバディものとして楽しめるとともに、突如119便の消息がわからなくなったことから、情報収集や対策を取ろうとするトレイルブレイザー社本社の様子も同時に描かれていくため、終始飽きることはない。
また、元空軍のパイロットである機長は、それなりの戦闘スキルはあるものの、いつものバトラーほどの無双っぷりではなかったのは意外だったところであるとともに、ゲリラや本社が送り込んだ傭兵チームとの銃撃戦では、クルマを貫通させて相手を狙う機銃が登場していたのが印象的。
クルマ好きの視点からすると、トレイルブレイザーというと、かつて日本にも正規輸入されていたシボレーのSUVが真っ先に思い浮かんだのだが、本来の意味は先駆者や開拓者といった意味であることを、あらためて知った次第。
前述のように実在の島や、反政府ゲリラが登場するため、妙なリアリティを盛り込んではいるものの、基本的には昨今では珍しいエンタメに全振りした航空パニック&サバイバル・アクションであり、観たいものを全て見せてくれる良いも悪いもケレン味たっぷりな良作。

利用価値があるから、殺されない。
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