蛇らい

ゴジラ-1.0の蛇らいのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.4
VFXの凄まじさが使うべきタイトルに使われたという満足感でいっぱいだった。脚本、特にセリフと演出面での相変わらずな山崎貴感を打ち消す程の素晴らしさだった。

序盤の特攻兵が帰還する島での一連のシーンは『ジュラシック・パーク』オマージュのカメラワークやアングルだ。『ゴジラ』でも使われる海、水中というロケーション、セリフとして登場する水中機雷を使った大胆なアクションも、活劇としてのゴジラを復権させている。それらは明らかに『ジョーズ』オマージュでもあろう。視覚的な楽しさに溢れていて、ハリウッド映画的なトンマナが施されているという点では極めてアメリカ映画的なゴジラと言えるだろう。音楽の重厚さとタイミングも完璧だ。

復興した東京の街を解体するゴジラを目の当たりにして、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズで表現した家族の価値観を1度スクラップする覚悟なのだと感じた。また、『永遠の0』で特攻兵を英雄視するような作品を出してしまったことに対する、自省としても受け取れるシナリオは、映画作家としてとても信頼に足る。ラストで浜辺美波演じる典子に再開できたのが、特攻せずに死ななかった結果としてのカタルシスなのも美しい。

設定上、無理があるような民間だけでゴジラを対するという展開は、意地でもそうあらなければならない監督の強い意志が見受けられた。政府がゴジラを倒し、ヒーローとして崇められる映画を作らないという意志と、自らの運命を委ねるくらいなら自分たちが戦った方がマシだという現状への失望を感じるシナリオだった。

この映画を全否定してしまうと、日本映画すべてを否定することにも繋がるくらいの完成度だったと思う。そういう意味で、今後の大作の日本映画の可能性を示唆する、今年を代表する一本ではなかろうか。
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