ドント

ウィッチスターズ 流星からの寄生体Xのドントのレビュー・感想・評価

3.5
 2018年。魂を感じた。魂が燃えるのを感じた。紫色の流星群が降るハロウィンの夜、乱痴気騒ぎにいそしもうとした男たち、呼ばれた娼婦のネーチャンたち、「またヤクやって女と遊んでるんでしょ!」と激怒して突っ込んできた恋人らを、発光ドログチャ流星寄生体どもが襲う!
 低予算である。すごい低予算映画である。そして手作り感が大変な映画である。森や一部のクリーチャーはミニチュアだし、リッチなCGなどは使っていない。メインで出るのは11人、舞台はほぼボロ屋敷の中だけ。寄生体の体液を浴びた奴の異常は主に異色のネバネバとビカビカのライティングで表現する。話がちょっとよくわからない部分もある。正直序盤はちょっと大丈夫かな? と思った。
「で、それがどうしたの?」とこの映画は言う。「カネの問題じゃなくてさ、俺がやりてぇのはこういうことなんだよ」と堂々と言う。確かにレトロ趣味で、ハンドメイドで、いろんなものが不足している。だがこういう作品にありがちな「低予算なもんでェ~」という半笑いの逃げの姿勢がない。そんなものは一切ない。ギャグはあるけれどそれはあくまで本筋とは別の場所での「休憩枠」として設定されている。
 人体が変形し溶解し怪物になる様は見事だ。その一点で突破しようという映画も多いし私はそういう作品も愛している。しかし本作はそこだけに収まらない。人間の美醜を描き、ドラマを描き、戦いを描き、理屈を越えた熱さを描く。そういうものが高らかに鳴り響いて、ミニチュア撮影やローテクな特撮とも共鳴し、ラスト5分に結実する。
 熱さばかりではなくセンスもあるし、「ここは勢いで走り抜けて、ここは静かに締めよう」という配分ができるバランス感覚も有している。それらを巧みに隠しつつ、情熱が作品全体を包んでホットなものに仕上げている。ワカンダ映画『クレイジー・ワールド』の、あの熱量に似たものがある。勘定を合わせたりトンチキで誤魔化したりクレバーさで糊塗したりしない、剥き出しの拳のような映画を久しぶりに観た。魂を感じた、魂が燃えるのを感じた、とはそういうことだ。血がたぎった。
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