ハリウッドの "御作法" ってこういうことかとよくわかった。断然、オリジナルの方が好きだ。
オリジナルを観た後レビューで「細かい部分の説明はリメイク版に劣る」というのを読んで「何のことだろう⁈」と疑問だった。
なるほど、リメイク版は老若男女に理解しやすいよう配慮されたユニバーサルデザイン仕様⁈になっていた。すべての事柄にスポットライトをあてて説明し、観る人に想像する手間をかけさせないようになっている。
終盤、主人公が妻とのくだりを向かいに住むメキシコ人女性に話すシーン、ここは最初から引っ張ってきた関心事に対する "謎解き" となる大きな見せ場。オリジナルはシンプルで明快なのだが、リメイクは強調するためなのだろう、わざわざシーンを分け、間伸びしたくどい演出になっている。
家電製品のマニュアルならそれで良いし、むしろそうであれだけど、アート作品ではいささか興醒めする。"行間を読む" のが楽しいんだから。まあ、リメイクは "お商売" で、そのためにハリウッドが蓄積してきた "売れるテクニック" なのだろう。
全体的にはやはりトム・ハンクスの存在感が大き過ぎて、共演者たちが可哀想。メキシコ人女性も少し空回りしている感じがするけれど、そこは陽気な国民性な設定なのかも。
リメイクではなく本作だけを観たのなら、それなりに面白いと思ったかもしれない。でも、優れたオリジナルがあるのだからもう十分に思える。そんなことはハリウッドだって百も承知の上だろうけれど。
こうしてみると、「生きる」のリメイクが出来るだけオリジナルと同じ世界観であろうとしているんだなあ、と改めて感じた。