ブタブタ

マンティコア 怪物のブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

マンティコア 怪物(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

超常現象は一切起きてないのにそこには確実に《魔法》や《呪い》が存在したのは『マジカル・ガール』だったけど『マンティコア』もまた然りで、長編1作を挟んで『マジカル・ガール』の精神的続編の様な作品だった。

『マジカル・ガール』ではラストに《魔法少女ユキコ》のコスプレした余命いくばくもない少女アリシアの肉体を依代に、確かにそこにこの世ならざる存在が顕現した様に『マンティコア』では少年クリスチャンが描いたマンティコアの絵によってこの世ならざる存在である《マンティコア=怪物》が現実世界に顕現した。

京極夏彦『百鬼夜行シリーズ』では存在しない筈の《妖怪》という物が確かにこの世に存在するという形而上学的な《怪物》として描かれる。

「子供の頃は将来《虎》になりたかった」というフリアンの《夢》を紙の上という異なる世界で叶えてあげたクリスチャンの純新無垢な思いが図らずもフリアンの内なる《怪物=マンティコア》をハッキリとフリアンの目の前に可視化させてしまうあの場面は圧巻だった。
CGもVFXも何も使わずに確かに《マンティコア》をフリアン及び観客の前に顕現させて見せた。
だからフリアンの絶望と恐怖は余りにも大きく発作的に死を選ばせる程だったと。

首から下が動かなくなってしまったフリアンもまた或る意味、合成獣(キメラ)のメタファー。
其れを死んだ父の代わりに甲斐甲斐しく世話するディアナもまたフリアンと同じく壊れた人間であり、だからあの結末はハッピーエンドかも。

其れからぺドフィリアについては英国出身で現在は日本で活動する画家トレヴァー・ブラウンが確かヴァニラ画廊の個展の時のインタビューで「少女のヌードを描く行為は英国ではテロリストが核兵器を使用するのと同様」と語ってて、なので日本でしか活動出来ないと。
少年のヌード描いただけで仕事も失い社会的に抹殺されるとか怖すぎる。

しかし東京国際映画祭の上映から『マジカル・ガール』の監督作だしすぐ上映されると思ってたのに漸く見る事が出来た。
あと《ボーイッシュな女性》ディアナ役のゾーイ・ステインさんが可愛い。
何か藤子・F・不二雄漫画に出て来る女の子みたいな、見た目も性格もキャラクターなんだもの。
伊藤潤二始め監督の日本趣味がまた各所に散りばめられてたけど『我が子を食らうサトゥルヌス』を二人で見る場面では「之は進撃の巨人のモチーフだ」とかフリアンが言い出すのを期待してしまった。
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