tkyk

ファイブ・デビルズのtkykのレビュー・感想・評価

ファイブ・デビルズ(2021年製作の映画)
4.4
それぞれの登場人物の目線の微妙な違いが非常に印象的だった。おそらく舞台はフランスの田舎なのであろうが、田舎特有の閉塞感や差別意識を人の視線から感じさせるのは非常に映画的だった。特に黒人や同性愛者に対する視線は強烈だった。

本作はSF風味のヒューマンドラマと言える。匂いを嗅ぐ事で他人の過去に侵入できるという設定はそれ自体珍しいが、その設定が奇抜さだけでなく、本作のテーマを冷酷な視点で表現しているのが見事だった。子供は無条件に「良き存在」と捉えられがちだが、立場によっては子供の存在自体が絶望になり得るという事を今までにない視点で描いていた。

全体的に良質な作品だったが、特に最後のカットは一番良かった。一見唐突なシーンであるが今までの流れを踏まえてみるとそこはかとなく悲しさを感じ、深い余韻が残った。全く説明的な描写をせずにこのカット一つで余韻をもたらすのは見事だった。最後の最後まで質が高い良作だった。
tkyk

tkyk