カイザーソゼ

aftersun/アフターサンのカイザーソゼのネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

辛いけどすごく良い/突き刺さる映画。

愛する娘との最後の想い出。
ギリギリの状態で、父としての形をなんとか保っているカラム。
ただ、それでも、娘と一緒にいる中で形を保てない時が劇中に何回も出てくる。その線を超えた時の重たさ、ゾクっとする感じ。
ああ、これはもうただの親子のone of themな旅ではないとすぐさま感じる。

選曲が大変良くて。
Losing My Religionのシーンはその前後も含めて空虚に響き、

Blur"Tender"の
Come on, come on, come on
Get through it
Come on, come on, come on
Love’s the greatest thing」
はそのまま

QUEEN "Under Pressure"
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Can't we give ourselves one more chance?
Why can't we give love that one more chance?

Why can't we give love, give love, give love, give love
Give love, give love, give love, give love, give love?

Because love's such an old fashioned word
And love dares you to care for
The people on the edge of the night

And love dares you to change our way of
Caring about ourselves

This is our last dance
This is ourselves under pressure
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娘を愛したけど、あらゆるプレッシャーに最後はやられてしまう父カラム。カメラを閉じた時何を感じたのだろう。
そしてそのムービーをみた娘は何を感じるのだろう。

父は明確に娘を愛していたし、どうにか娘の記憶にとどまり続けたかった。うまい形で残れるのか、スマートに生きていけたら何か別の道もあったかもしれないけど、その一つのアウトプットが旅行とそのムービーだったわけです。

最初から死のうと思っていたのかはわからない。ギリギリな中でやってみて、やっぱりその後にダメだったのかもしれない。ただ何にせよそのギリギリ感が本当にうまく/怖いくらいに伝わってくる。

子は子なりに、親は親なりにしか相手のことを想像できない。そこには限界がある、でも自分が同じフェーズに入ってそれを追体験した時(まさにこのムービーを観た時、そして観終わった時)、娘は父の精一杯の愛と、ギリギリの状況をようやくわかり悲しく、またえも言われぬ感情が爆発したと思う。

ただ、悲しい、をこえてしっかり突き刺さってくる作品として本当に素晴らしいと思いました。

娘役の方は、この映画の筋をそこまで認識せずに演じて、完成品を見て驚愕したらしい。だからこそあの娘の演技だったのかもしれない。すごい。