michiko

ウィッシュのmichikoのレビュー・感想・評価

ウィッシュ(2023年製作の映画)
3.5
X(Twitter)などのSNSやYouTubeに代表されるデジタルコンテンツ収益の餌食になった。それが私の個人的な本作への同情の評価である。

本作の不評は北米での評価から始まり、批評家だけでなくユーザーからも駄作と言われた。それはより過激な言葉でSNSで広がり一般的な意見として浸透していったと思われる。私もまたコレほど不評の声が上がる作品はそれなりの理由があり、感想があくまで個人の意見だとしても、総合的にみて良く無いのだろうと思い込み、劇場に足を運ぶ事は無かった。

しかし配信で視聴し、他人の感想は全てでは無いものだと改めて感じた。それはこれまでも周りの評価は悪いが個人的には大好きな作品が多く存在する事から当たり前の事象である事は分かりきっていたはずなのに、心が曇っていた。私にとって本作は非常に楽しめた。

100周年記念作品として「願い」自体をテーマにする事も驚きと納得感がある。そして本作のヴィランであるマグニフィコ王が家族の喪失というトラウマを抱え、恐怖に弱く、非常に人間味溢れるキャラクターとして描かれていた為に、彼の「願いの隔離」という行動原理も非常に説得力が高く、シナリオの破綻も無いように感じた。残念な点も勿論あり、マグニフィコ王に救いが無かった事である。本作の主人公は半分はマグニフィコ王である。人間の弱さを描き、利己主義を体現する。しかし彼も人間が引き起こした悪の被害者であり、そんな彼の”願い“に対してもフォローが欲しかった。
クライマックスの展開は非常に熱く燃える。その勢いで多少ご都合主義であろうとも彼を救って欲しかった。もしくは世界の中でただ一人だとしてもお妃の心は彼に向かい続けていて欲しかった。

「願い」は誰でも叶うわけでは無い。努力しても叶わない可能性もある。しかしその努力そのものや生き甲斐が我々の生活を色鮮やかにするのである。それは人に優しくする事にも繋がるし、人や世代を超えた大きな希望にもなる。ディズニーの100年間での多くの作品の総括として、そのテーマはしっかりと感じ取れた。

私はこの先も、私にとってはこの作品は良かったと伝え続けるだろう。
michiko

michiko