大好きな吾郎さんを観に行ってそりゃ当然素晴らしかったけども、それ以上にガッキーさんに驚く。森林伐採してダム作るぐらいの新境地開拓。「新境地」ってよく言うけど、蓋を開けるとそれはたいてい大悪役とかキャラものとか、ガッツリ衣装メイクのガラッとチェンジで「そら変わるやろ」ってのが多いけど、今作の新垣結衣はこれまでと何ら変わらぬ風貌のまま内側で大化けしているのが見て取れて、びっくりした。岸監督が一貫してやってきた「装飾のない演出」が、国民的好感度最大手国民的愛されスーパーポッキー女優さんにも余裕で通用してて、圧倒された。特に最後の顔、素晴らしかったです。ダム決壊。
分からないだらけの世の中で、水に性的興奮を感じるイオンの布団売り場のお姉さんの気持ちや、息子が不登校系こどもユーチューバー(モロにモデルあいつやん)をやり始めた検事の気持ちを、画面を通して痛いくらいに分からせてくれたこの鑑賞体験はデカい。揚げ足系のフェミニスト自警団や神出鬼没のセクシュアリティ描写警察の方々(ご苦労様です！)も、この、人々の潜在的な「決めつけ」をほぐすような描き方には語彙力を失うのではないでしょうか。知らんけど。完全に分かち合える、ビタッとハマる人なんて、それに近い人ですら(性別関係なく)出会ったことがない自分は、この映画に出てくる人たちに羨望を抱きました。「なんで彼女いないの？」とか「結婚願望とかないの？」みたいなダルつまんない質問に巨大風船膨らませられるくらいのタメ息をついてきたんで、あの「手を組みませんか」という形の結婚、マジで「それだ！」だった。この世の大体は「お前に興味ない、ほっといてくれ、テキトーにお幸せにやってて」なのよ...。
二重生活、荒野、前科者と、ほんと一貫した作風の岸監督だが、今作は明らかに画が良くなっていた気が。手持ちカメラはもちろん大部分を占めていたけど、たまに入る固定の画がむちゃくちゃいいんすよね。散らかったリビングと、その奥で一人食事する吾郎さんのカットと、何より最後のカットが素晴らしかった。ケンローチみたいな終わり方だったな。食事も、おかずなしのカレーとオムライスってのがその家庭をめちゃくちゃ表してて良かったし。でも...相変わらず“黒み”で一回切るよなぁ。あれなかったら完璧だったくらいいい映画だった。でも確実に岸監督作で一番いい。忘れちゃいけないのが磯村勇斗５つ子説。映画出過ぎ。一時期のサミュエル・Ｌ・ジャクソンくらい見る。しかも出てる映画全部良い。選球眼マサイ族。
