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ロスト・キング 500年越しの運命のtkykのレビュー・感想・評価

3.9
普通の主婦が王様の墓を掘り当てるというストーリーだけで観たくなったが、それが実話である上に王様が悪名高いリチャード三世であるというのでより一層面白そうに感じた。

正当に評価されない主人公がリチャード三世と自分を重ね合わせる構図は分かりやすく、彼女が病的なまでにリチャード三世にこだわるモチベーションが明確なので1本の筋が通った話になっていた。

終盤の大学の姿勢もある意味興味深かった。初めは一蹴していた大学が成果が出た途端に自分の手柄にしようとしており、アカデミックな世界も非常に人間臭い世界なんだと思った。
それ以外にも主人公が直感で掘った場所から王の遺骨が見つかるというのも面白かった。アカデミックな活動は常に理論立てて推測しながら行うものだと思うが、直感だけで大発見をもたらすというのはそういった常識を覆すものであり、感情や直感の大切さを感じた。(実際に直感で掘り当てたのかは分からないが)

本作はリチャード三世を非常に魅力的に見せており、それは主人公にとってのリチャード三世像であるわけだが、実際の彼の真実はグレーなままに留めているのはフェアに思えた。本当の姿が分からないこそ、歴史のロマンがあるとも言えるので本作は観客にリチャード三世の本当の姿を委ねているとも言える。

パンフレットの北村紗衣先生の解説も面白く、充実した映画体験ができた。
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