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メトロポリスのnowstickのレビュー・感想・評価

メトロポリス(2001年製作の映画)
3.6
フリッツラング監督の1927年公開のサイレント映画「メトロポリス」という作品にインスパイアされて、手塚治虫が描いた1949年の漫画「メトロポリス」を題材に、「AKIRA」でお馴染みの大友克洋が脚本を描き、「劇場版 銀河鉄道999」等の監督を務めたりんたろう氏が監督をしたアニメ映画。
作品の世界観も、フリッツラングと手塚治虫のメトロポリスと、AKIRAの世界観が混ざったような感じだった。

フリッツラングの映画も、手塚治虫の漫画も、AKIRAの映画も見た自分の感想としては、物語の設定はフリッツラングの世界観に近く、登場人物は手塚治虫の漫画から取ってきて、ストーリー展開としてはAKIRAという、折衷案みたいな内容になっていた。
しかしフリッツラングのメトロポリスの世界観と、AKIRAの世界観は同じ近未来都市を描いた作品だが、全然別物だと思う。
AKIRAは「近未来への不安感を、悲観的に描いた作品」だったと思うが、フリッツラングのメトロポリスは「現代のメタファーとしての近未来都市メトロポリスを、楽観的に描いた作品」だった。
世界観やストーリー展開で言うと、AKIRAはフワフワしていた一方、フリッツラングのメトロポリスは地に足がついていたように思う。
「フワフワした世界観×近未来への不安」「地に足ついた世界観×現代のメタファー」これらの組み合わせは正しいと思うが、本作はその辺の組み合わせがグチャグチャになっていて、全体的なメッセージやテーマが分かりづらくなってしまったように思い、見ていてあまり乗れなかった。

とはいえ、本作はジェームズキャメロンが評価していただけに、ビジュアル面では素晴らしいシーンが幾つかあった。特に雪の中でのシーンは素晴らしく、おそらく、りんたろう氏が描いたであろう絵コンテが良いのだろう。
日本のアニメの映像表現が好きな人は、ある程度楽しめる作品だとは思う。
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