bebe

パリタクシーのbebeのレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
4.6
観ごこちのいい作品。

切羽詰まったシャルル。思い出話は苦手。
マドレーヌの身の上話。波乱の人生。しかし幸福な思い出が輝く。懐古的ではあるが、嫌な気はしない。
互いに幸運な出会いだった。

 誰もが自分の「タクシー/人生」の運転手で、朝から晩まで、連日休みなく、色んな人を乗せてあちこちを忙しなく動き回る。24時間勤務、年間休日0日の「運転」業務。逃げ道はなし。おまけに客は選べない。クソッタレかもしれない。
 それでも中には素晴らしい出会いune belle rencontreがあり、素晴らしい旅une belle courseになることがある。巡り合わせによって、同じ車両に乗り合わせ、人の降車を見送り、自分もいつか降りる。「人生」とはまるで交通機関のようなものだった。
 ところで、その「タクシー」は「良いタクシー」だったか?それを判断するのは何をもってか?悪い乗り合わせに目がいくか?良い巡り合わせを大切にするか?特に正解はない。Une belle course「美しき旅路」はその選択肢の一つであるように感じた。

これは「出会い」の物語。


上手く言えないが…
シャルルとマドレーヌ。彼らは運転手と乗客であって、祖母とその孫くらいの年齢差。特別、共通点と呼べるものがあるわけではない。彼らの間に何かリンクするものがあったわけではないが、彼らはすごく「親密な」関係になった。それは何か経験を共有する事による「協力」あるいは「共犯」ではなく、もっと人間の根っこに近いところに感じる深い「共感」によるものだったと思う。この共感は理由があってできることではなく、理由がないのにできてしまうタイプの…。なんか普遍的な、やつ。
bebe

bebe