廃校が決定している高校での卒業式の前日と当日の2日間を描いた本作は、少女たちを群像劇的に描きながらも、キャラクターの誰もが解像度高く、繊細な心情を掬い取ってみせる。
特に恋人を失った河合優実の卒業式の答辞と、静かにダニーボーイを歌い上げる佐藤緋美の卒業コンサートの素晴らしさよ。体育館という同じ場所でざわめきをかき消すカリスマ的な存在感に圧倒される。
学校と一括りにされつつも、各々が拠り所とする場所や人や物を慈しみ、最期になるであろう瞬間を誰かと共有する。とにかく一つ一つの瞬間が尊く、愛おしく、美しい。そしてそれが青春そのものであると高らかに謳い上げるのではなく、静かに心に染み入ってくる傑作だ。
