りっく

ぼくの伯父さんのりっくのレビュー・感想・評価

ぼくの伯父さん(1958年製作の映画)
3.9
ユロ氏の行く先々で、それまで当たり前だと思われていた日常生活の秩序がささやかに、だが確実に崩壊し、観客に笑いをもたらしつつ、世界の不条理と不確実性を認識させる。

世間体と合理性の支配する世界で、心優しい謙譲の人ユロは災難の魔にほかならない。超モダンな邸宅で自動式機械生活の仕掛けの全てと摩擦が生じる。それを笑いつつも、声高では決してない形での文明批評になっているのが優雅でスマートだ。

混沌と秩序、神経質と無神経、モダンとレトロ。そんな相反するものがないまぜになりつつも、決して下品にはならない一線はきっちりと死守するジャック・タチの計算された場面設計が光る。
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