なんとも奇妙な味わいの映画。
暑苦しい、いや、重厚な演技の
香川照之が、端役専門の俳優と
いう役柄。
斬られたと思うと、
街角で、衣装を変えて、
また斬られる。
オフになったかなあと思うと、
また撃たれ、「カット!」の
声がかかる。
時代劇の衣装で、券売機に並び、お昼を食べたり、衣装をつけて、その他大勢のエキストラと共にマイクロバスに乗り、ロケ現場へ向かう。
魂が抜けたような“入れ物”だけの人間。
虚構と現実が入り乱れていく。
虚構と現実のその向こうにまた、本当の現実がある入れ子構造のおもしろさ。
ようやく日常が見えていき、
後半は、彼の過去を知る人と
関わっていく。
ちりばめたフック、
記号的に強調される“几帳面”
という性格のカット。
不穏な音楽、嘘臭い笑顔、
いい人らしき顔と悪い顔が
のぞく個性派脇役。
ロープウェイとタクシーは、
自分を持たない彼の暗喩。
こんな企画、よく考えたなあと
思っていたが、3人の監督集団の初長編作。
1日に何度も死ぬエキストラと
記憶の曖昧さをモチーフにした
作品。
こんな香川照之、観たことない!
を演じる香川照之の独り勝ち。