ユカリーヌ

宮松と山下のユカリーヌのレビュー・感想・評価

宮松と山下(2022年製作の映画)
3.9
なんとも奇妙な味わいの映画。

暑苦しい、いや、重厚な演技の
香川照之が、端役専門の俳優と
いう役柄。

斬られたと思うと、
街角で、衣装を変えて、
また斬られる。

オフになったかなあと思うと、
また撃たれ、「カット!」の
声がかかる。

時代劇の衣装で、券売機に並び、お昼を食べたり、衣装をつけて、その他大勢のエキストラと共にマイクロバスに乗り、ロケ現場へ向かう。

魂が抜けたような“入れ物”だけの人間。
虚構と現実が入り乱れていく。
虚構と現実のその向こうにまた、本当の現実がある入れ子構造のおもしろさ。


ようやく日常が見えていき、
後半は、彼の過去を知る人と
関わっていく。

ちりばめたフック、
記号的に強調される“几帳面”
という性格のカット。

不穏な音楽、嘘臭い笑顔、
いい人らしき顔と悪い顔が
のぞく個性派脇役。

ロープウェイとタクシーは、
自分を持たない彼の暗喩。

こんな企画、よく考えたなあと
思っていたが、3人の監督集団の初長編作。

1日に何度も死ぬエキストラと
記憶の曖昧さをモチーフにした
作品。

こんな香川照之、観たことない!
を演じる香川照之の独り勝ち。
ユカリーヌ

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