映画大好きそーやさん

MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないの映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

4.2
タイムループと何ら変わらない、繰り返しの日々。
初めに言っておきましょう。これは良作でした!
本作は、多忙な広告代理店で働く吉川さん(円井わん)が、後輩2人組にタイムループをしていると告げられ、本当にループしていることに気付くところから始まる、タイムループ脱出コメディです。
『14歳の栞』を撮ったことでも知られる、竹林亮監督のセンスが光りに光った1本で、画の撮り方、選曲、テーマ性、脚本と、どれを取っても優れていて、82分間ずっと楽しかったです。
前半はタイムループしていることを同僚たちに役職順に気付かせていく(上申制度を模倣した)ストーリーが展開され、中盤以降でまたその味に変化が加えられていきます。
前半部分はそれこそ『オーシャンズ11』のような仲間作りシークエンスの面白さが凝縮されたようなストーリーテリングで、テンポ感とともにサクッと楽しませてもらったのですが、中盤以降で始まるタイムループの原因である部長が抱えた、本当の思いとは何かが明かされ、部長のためを思い社員たちが協力してタイムループを抜け出そうとする過程には、別ベクトルの感動も重なって、最後にはしっかりと泣かされる自分がいました。
人生は上手くいかないことも多いです。
何度も失敗し、諦めて、逃げて、それでも生き続けることは辞められません。
生きるにはお金が必要で、その最低限暮らせるお金を稼ぐためにしたくもない仕事をこなさなければならないこともあります。
人生を何度もやり直せたら、それはそれは楽でしょう。
ですが、現実はそう甘くなく、だからこそ、人は肯定される、もしくは、肯定する必要があるのだと思います。
これでいいと、そう思える何かを得る必要があるのだと考えています。
そんな何かは人それぞれで、本作はそんな何かを見つけることの大切さを再度説いたような作品となっていました。
そうした普遍的な人が生きる上で必要なことを説くために用いたモチーフが仕事(それもブラック企業)であったというのが、本作における最も成功した部分だったと思います。
誰しもが抱える問題を、誰しもが体験する経験を元に描き出す。とても理にかなっていますし、刺さる人も多いでしょう。
かく言う私も社会人として働いている訳ではないものの、アルバイトや学校でのあれこれを思い出して、共感する気持ちを芽生えさせながら観ていました。
全編に渡ってコメディ調で展開されていくのも良いですし、映画的な裏切り、ツイストが随所に散りばめられているのも流石としか言いようがありません。
タイムループを利用したコメディ描写が秀逸だったのも印象的で、部長にパワーポイントでタイムループしていることを理解させるシーンは、1人で大笑いしながら鑑賞してしまいました。
映像的に(作為性を感じさせず)説明する力量も多分に感じて、前述した部長にタイムループを納得させるシーンもそうですが、冒頭も冒頭、後輩2人組が吉川さんにタイムループしていることを飲み込んでもらう、説明するシーンもとても理解がしやすく、タイムループという設定が難なく分かるようになっていました。(他にも、〇というモチーフの使い方であったり、ループの起点となっている月曜日において、何度も横にカメラをスクロールさせ、ループしていることを強調させていたりと、あらゆる面で映像が効果的に作用していたと思います)
ただ、ところどころに使われていたCGのクオリティの低さや、正の字でタイムループを数えていたという、辻褄の合わない描写等、詰めの甘さを感じる部分もあって、その辺りは看過できないポイントでした。
とはいえ、作品全体の出来は申し分なく、低予算でもアイデア次第では面白い映画が撮れることを証明していた作品だったと思います。
総じて、タイムループという設定を存分に活用しつつ、共感性の高いアプローチ、テーマ性をもって、最高に笑って泣ける良作に仕上げられていました!