KnightsofOdessa

Pink Moon(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Pink Moon(原題)(2022年製作の映画)
3.0
[] 60点

フロア・ファン・デル・ミューレン(Floor van der Meulen)長編三作目。"次の誕生日が最後だ"と老父ヤンは言った。数年前から温めていた自殺に、遂に踏み切ることにしたらしい。ディナーの場で言われた二人の子供、兄イヴァンと妹イリスは動揺する。健康そのもので孫の面倒まで見てくれて広くて過ごしやすい家に住んでいて、一体なぜ自殺など考えるのだろうか?出来る限り父親の決断を尊重しようと早い段階で決めたイヴァンに対して、納得のいかないイリスは様々な抵抗を始める。父が先に売ってしまった家具を取り返しに行ったり、税金対策で先に売ることになった家を見に来た女性に"この人がここで自殺する予定の家主です"と紹介したり、というそれらの抵抗は説得に至らないどころか父親との距離まで広げてしまう。老父と安楽死というテーマはフランソワ・オゾン『すべてうまくいきますように』でも語られていたが、あちらでは葛藤しつつも全員が安楽死という選択を尊重していた(その上で安楽死成立をサスペンス化としていた)ことを考えると、イリスの反応の方が一般的なのかもしれない。そんな彼女の心の葛藤を丁寧に描いた一作。
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