映画大好きそーやさん

おじいさんのボートの映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

おじいさんのボート(2020年製作の映画)
3.2
自ら作っていく、終わりへの道。
隣人の孤独死をきっかけに、自分の死とも向き合うことを決めたお爺さんのお話です。
老いていながらも、至って前向きに、ボートを作ったり、洞窟を掘ったり、飾り付けをしたり、水を引いてきたりと、アグレッシブに死に向けての準備をするお爺さんの姿が素敵でした。
ボート作りをする中で、描写として何人ものお爺さんを同時に画面に映して、どれだけ沢山動き、多くの時間を作業に費やしたかが映像として伝わる手法は、監督の手腕が光った良い演出だったと思います。
また、洞窟を掘って飾り付けをしたことで、ボートでその洞窟を渡るロングショットが神秘的に見え、とにかく素晴らしかったです。
皆さんも書いていますが、おそらくその電飾が施された洞窟は三途の川のメタファーであり、そこを渡ったことでお爺さんは死の世界に行き着いたのだと思います。
認知症なのか、いくつかの場面で幻覚を見ているようなカットもあり、死期は近かったのだと推測されます。
そんな中でも自分なりの幸せを見つけ、最後まで必死に生きようとする姿こそ人間らしく、見習わねばならない部分だったのではないでしょうか?
お爺さんということを鑑みると、非現実的な部分も多々あって、その辺りは個人的に没入度も下がってしまいましたが、それを差し置いてもポジティブなテーマ性が、最後まで飽きさせることなく観られるようにしていたと思います。
最後は星になっていくという、ギリシャ神話を彷彿させる展開で、もう細かいことなど気にしているのも野暮に感じましたね。
総じて、普遍的ながら忘れがちな精神性を提示する、素敵な作品でした!