ぶみ

FALL/フォールのぶみのレビュー・感想・評価

FALL/フォール(2022年製作の映画)
4.5
ようこそ、地上600mの絶望へ。

スコット・マン監督、グレイス・フルトン、バージニア・ガードナー主演によるサバイバル・スリラー。
使われていない高さ600mのテレビ塔に登ることに成功したフリークライマー二人が、梯子が崩壊したことから頂上に取り残される姿を描く。
夫をクライマー中に落下事故で亡くした主人公ベッキーをフルトン、親友のYouTuberハンターをガードナーが演じているほか、ベッキーの父親役としてジェフリー・ディーン・モーガンが出演しているが、作品中に登場するのは、ほぼ前述の二人のみ。
物語は、夫を亡くしたベッキーが、頂上で遺灰を撒くためにハンターとともにテレビ塔に登る様が描かれるが、序盤で早々に登頂に成功し、以降、梯子が崩壊したことから、東京スカイツリーとほぼ同じ高さである高さ600mにある拙い足場が舞台となるため、ソリッドシチュエーションものとして展開。
他の作品でありがちな絶海の孤島や、大海原の航海、はたまた雪に閉ざされた別荘といった設定とは違い、そもそも持っているものや、使える資源が限られているため、その高さに加え、絶望感は桁違い。
そんな状況の中、残りの尺をどのように消化するのかと心配になるが、なんのなんの、あの手この手で助けを求めようとする二人の姿に飽きることはなく、ついつい力が入ってしまう。
何より、冒頭にあるフリークライミングのシーンを始め、低予算映画にありがちな映像のチープ感は皆無で、序盤から知らず知らずのうちに、手に汗握ることとなる映像は、一見の価値ありで大スクリーンで観るべきもの。
また、主人公が知らぬところで、ボルトが緩んだり、錆びついた梯子が外れそうになったり、肉食のハゲワシが飛来したりと、観る側の不安を掻き立てる演出も秀逸。
超高層建造物という今までにない設定を活かしたサバイバルものとして、手に汗握る展開が続くため、高所恐怖症の方にはオススメできないぐらいの内容であるとともに、それを体験するには大スクリーンで観ることが必須となる傑作。

生きることを恐れるな。
ぶみ

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