すし酢高跳び

ヒンターラントのすし酢高跳びのレビュー・感想・評価

ヒンターラント(2021年製作の映画)
4.0
絵本のような不思議な世界。

これは全てブルーバックで撮影されていて、ヒーロー作品のようなリアリティを求めるのではなく、あえて違和感のある歪みを用いる事で、物語にも影響を与えた、ユニークな作品です。

とはいえ、決して面白おかしなファンタジーではなく、ダークなミステリー作品です。なんせ舞台は第一次世界大戦後のオーストリア、ウィーン。

戦後の国の様子は、世界どこも同じなんですね。混沌として、手足が無かったりする兵士たち。なのに街の人は冷たく『戦争は終わったんだ』と言い放つ。
傷付いたのはお互い様なのに、兵士だった人たちを悪者にしたがっているようだ。
喉のここまで『俺は国の為に命をかけて戦ってきたのに!』と出る。しかし、言えばアカだと罵られ牢獄行きだ。

ね、暗いでしょ?

けどね、このダークで悪夢的な映像が物凄く良いんですよ。

ペルク(ムラタン・ムスル)を始めとする帰還兵たちは、捕虜となって命からがら帰って来ました。終戦後すぐではない為、浦島太郎感が凄く時代の波に乗れません。
街には戦争のせいで気がふれてしまった人や、帰還兵をからかう人、罵倒する人すらいます。

国に戻るのを待っていたはずの家族も、もう居なくなっていました。愛する妻のアンナも娘も。

一緒に戻った帰還兵の1人が、翌朝港で磔(はりつけ)にされ、頭も切り落とされていました。
何かあれば連絡するようにと、親切心で連絡先をメモし渡していた為、容疑者となってしまうペルク。しかし、ペルクは戦争へ行く前は、刑事だったのです。しかもかなりの敏腕刑事。
若い刑事のセヴェリン(マックス・フォン・デア・グレーベン)だけは気に入りません。監察医のレンナーは、唯一変わらず普通に接してくれました。

その後も、帰還兵たちが次々に殺されていき、何かの共通点を見つけます。

【19】

死体はどれもメッセージ性があり、更には猟奇的。終わる事なくどんどん続きます。
そんな中、戦争から帰らない兄をいつも心配し、捜索依頼を頼む電話をするセヴェリン。
実はその兄を知っていたペルク。親身になって話を聞いてからは、信用して一緒に捜査するようになります。

そして、いよいよこの猟奇的な事件の真相に迫った時、まさかの事実に驚愕します!

いやぁ、この作品意外と言っては何ですが、とても評判良かったと思うんですよ。
ただ、ポスターからはわからない内容でしたので、スルーしちゃいましたが、配信で観て良かった、面白いです!

この終始暗い画像は、戦後または長く続く戦争を表しているよう。メインで進む謎解きも楽しめますが、常にこの戦争の落とす闇が付いて回る内容だと思いました。
この猟奇的な事件そのものも、原因は戦争なんでしょうね。

最後に一言だけ言わせて。
フランケンシュタインみたいだったけど、あのイケメンは間違いなく、マティアス・シュヴァイクホファー!美味しい役だし素敵でした。
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