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アルマゲドン・タイム ある日々の肖像のmaverickのレビュー・感想・評価

4.3
2022年のアメリカ映画。監督は『アド・アストラ』のジェームズ・グレイ。


監督自身の体験を基にした半自伝的作品とのこと。人生は理不尽であり、その上でどう生きるべきかということを教えてくれる話である。祖父と両親の導きや親友との事が糧となり、今の監督を形成しているのだと理解出来る。人生は美しいが、時に残酷。ひとつひとつのシーンに趣があり、それを感じさせる物語だ。一家はユダヤ人の移民であったから苦労も多かったが、黒人はさらに不当な扱いを受けている。人種問題について考えさせる内容という点でも重みがあった。キャストの力強い演技もあり、非常に見応えのある良質な作品である。

優しく主人公を導く祖父役をアンソニー・ホプキンスが演じる。ただ優しく甘やかすわけではなく、威厳を持って接する姿が印象的。言葉ひとつにも重みがある。母親を演じるアン・ハサウェイの力強さも印象に残る。いつもの可愛らしい彼女とは違う。父親を演じるのは『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』『シカゴ7裁判』のジェレミー・ストロング。厳しい父親のイメージで、こちらも印象深い。主人公を演じたバンクス・レペタもとても良かった。ジェシカ・チャステインも短いながら出演しており、役者の重厚な演技に酔いしれた。

父も母も厳しすぎる面があり、時には虐待のように思える場面もある。でもそうじゃないことは明白。愛があるか無いかの違いだろう。両親の優しさには涙する。


キャストに惹かれて鑑賞したが、作品性も素晴らしかった。深く胸に染み入る物語。確かに人生は理不尽。でもそれに屈しては駄目だ。理不尽と認識した上で、どう生きるかが大事。学びのある作品であった。
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