ロックウェルアイズ

EO イーオーのロックウェルアイズのレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
4.3
サーカス団のロバEOは、カサンドラという心優しい女性とコンビを組んでいた。
しかし、動物愛護団体の働きかけでEOを含めたサーカス団の動物たちは引き取られることになってしまう。
そして様々なことが重なり、EOの長く厳しい放浪の旅が始まるのだった。

面白いよりもまず凄いが勝つ。
どうやって撮ったのか、人間の気持ちを理解して演技しているかのようなEOの名演。
特に天敵の目が四方八方から交差する夜の森のシーンは秀逸すぎる。
有無を言わずに取り敢えず観て欲しい。凄かった。

1分先も全く読めない展開。
展開が全く読めない!みたいなことを売り文句に使う映画は数多あれど、大体突飛な方向に行くか読めちゃうかどっちかな場合が多い。
だが、この映画は違う。
そうなるべくしてなるのだが全く想像していなかった方向へと進んでいく。
EOもまた見えない流れのようなものに押し流されて様々な場所を点々とする。
濁流のショットからのラストシーンは、そういった自分の意思も持てず、人間の思うがままに流されていく動物たちの姿を暗示しているようにも思えた。
EOが出会う出来事はそれぞれ断片的だが、動物に対する人間というテーマは連続していて、動物愛護だとか環境保全だとか綺麗事一言で片付けられないところがものすごく好きだ。

上部だけで動物愛護とかヴィーガンとか叫んでいる人にはこれ観て発狂して頂きたい。
人間の残酷さを提示しつつも、生態系の頂点で人間が生きていく以上、動物を虐げることからは逃れられないのかもしれない。
最後に動物を使用する作品につきもののあのテロップが出るけど、とても強いメッセージを感じた。
そんなわけないでしょ。この作品自体が皮肉。
そもそもこの作品に出てる時点で動物の権利は?とか考え始めたら一生かけても答えに辿り着かない。

そして、映像が素晴らしく綺麗。
本当に大きなスクリーンで観れたら良かったと後悔した。
社会派作品と捉えることもできるが、アートとしてしまうこともできる。
どこに着眼するかでこの映画の価値も人それぞれで変わってきそうだ。
一言では語り尽くせないものすごい映画体験になった。