Hiroki

長ぐつをはいたネコと9つの命のHirokiのレビュー・感想・評価

3.9
1月は引き続き2023年の観残し&レビュー残しを中心にいきます!
そして終わり頃に2023のベスト10をタグできればと思っています。
今年は昨年達成できなかった目標100レビュー。
皆さま今年もよろしくお願いします。

今作は全くのノーマークだったのだけど、「面白いよ!」と複数の人からおすすめされて観に行った作品。
しかし後から気づいたのが続編でしかも『シュレック』シリーズのスピオンオフ。
前作もシュレックシリーズも観ていない私。
そもそも『スパイダーバース』に出会うまで海外のアニメーションに拒否反応があったので、ドリームワークスのアニメーションをほぼ観ていない。
そしてこれも後から知ったのたけどグリム童話の『長靴をはいた猫』からインスピレーションは受けてるものの物語自体はあまり関係がない。(原題は『Puss in Boots』で童話のアニメ化ではないのでよく考えたら当然なのだが...)
完全に事前準備不足で挑んだのだけど、なかなか面白かった。

というかこれ前作は製作総指揮がギレルモ・デル・トロだったんだ!今回の続編の草稿も作っていたみたいだし。
そりゃ面白いですよねー。

内容的には古今東西のいろいろな物語をリミックスしている感じ。
グリム童話はもちろんのこと、良心バッタは完全に『ピノキオ』だし(デル・トロはピノキオ大好きだな)、願いを叶える旅に出る所は『ドラゴンボール』(『西遊記』)とか、自分自身の闇と戦うシーンは『ゲド戦記』(『Earthsea』)とか、野生の獣に育てられた女の子ゴルディ(CV:フローレンス・ピュー)は『もののけ姫』とか、なんでも入る魔法カバン(ポケットじゃなくてカバン)なんてもはやそのまま...
本来は敵であり主人公の邪魔をしてくるクマファミリーがコメディリリーフ的な要素を担っているのも『アンパンマン』のばいきんまんや『ポケモン』のロケット団の感覚に近い。(あれって日本発?元ネタあるのかな?)
まーとにかく他の物語の良いこと取りという感じなんだけど、それが嫌な感じではなく絶妙のバランスで散りばめられている。

そしてなによりワンコ(CV:ハーヴィー・ギレン)が可愛すぎる!
最初にワンコの存在を煙たがるプス(CV:アントニオ・バンデラス)やキティ(CV:サルマ・ハエック)が一緒に旅をするうちにどんどん好きになっていって結果、敵に捕らえられたワンコを助けるために願いを叶える方を後回しにするという。
もーここらへんは泣いてしまう。

あとプスだけが9つあった命を取り戻したいという行き過ぎた願いなのに対して、キティは真のパートナーが欲しいとか、ゴルディは本当の家族が欲しいとか基本的にすでにすぐ側にある願いなのも面白い。ビッグ・ジャック・ホーナー(CV:ジョン・ムレイニー)の“全ての魔法を独占する”は置いておいて。

まーただ良かったからこその物足りない所もあって、1番は敵が多すぎて少し話が散ってしまっている所。
ゴルディ率いるクマファミリーとビッグ・ジャック・ホーナーの三つ巴までは良い。むしろ面白い方向に向かっていた。
しかしウルフ(CV:ヴァグネル・モウラ)が謎の存在として少しずつ出現し始めて、クマファミリー側でもホーナー側でもない別の敵だとわかってからが過剰。
さらにこのウルフがプス自身の死への恐怖の具現化だとわかる頃には完全に蛇足に思えた。
シリーズならまだわかるんだけど1本の映画102分で描くには要素が多すぎる。
最もウルフの役割はグリム童話からの引用で、プスの死生観こそがメインテーマだったみたいなので、それなら三つ巴ではなくそこは簡略化した方が見やすかったかも。
ただ根本としてキャラクターのポップさやコメディ描写と死生観に代表される曇天のような薄暗さはアンバランスな感じはしたかなー。

前作から10年以上経っても同じキャストで継続できるのはアニメーションの利点。
終わり方的にも続編ができそうな感じだったので、時間がかかっても次も期待したい!

2024-2
Hiroki

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