ぶみ

非常宣言のぶみのレビュー・感想・評価

非常宣言(2020年製作の映画)
4.0
「非常宣言」
飛行機が危機に直面し、通常の飛行が困難になったとき、パイロットが不時着を要請すること。
“これ”が布告された航空機には優先権が与えられ、他のどの航空機より先に着陸でき、いかなる命令を排除できるため、航空運行における戒厳令の布告に値する。

ハン・ジェリム監督、脚本、ソン・ガンホ、イ・ビョンホン等の共演による韓国製作の航空パニック。
韓国からハワイへ向かうKI501便でバイオテロが発生、事件を解決しようとする刑事や、事態に対峙する乗客等の姿を描く。
妻が飛行機に搭乗してしまった刑事をガンホ、娘とともに乗った乗客をビョンホンが演じているほか、チョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン等が登場。
物語は、冒頭から怪しげな行動を見せる男によりバイオテロが発生、パニックに陥る機内の人々と、地上で捜査に奔走する刑事、飛行機を着陸させようとする政府等の姿を中心に展開するが、韓国映画にありがちなコメディ要素は廃され、140分近い上映時間全てが緊張感に包まれている。
中でも、ウイルスがばら撒かれた機内の恐怖は、未だにマスク生活を強いられている私たちにとっては、洒落にならないものであり、そこに機長を失ったことで急降下したり、着陸できるかどうかといった航空パニックもの特有のジェットコースター感が加わっているため、閉鎖された空間での感染に対する恐怖と、スリル満点の臨場感の相乗効果により、一瞬たりとも気の抜けない映像に仕上がっている。
また、同じ時系列で地上でも捜査が進むが、こちらも上空でのタイムリミットがあることからスピード感が求められる状況となっており、政府も含め、究極の選択を次から次へと求められることに。
そして、韓国映画らしく、少ない時間でもクオリティ抜群のカーアクションがあり、車載からの映像は、こちらも痛くなってくるもの。
終盤、日本政府が登場するのも興味深いところであり、実際に同じような事態が発生した際に、どう対応するのか興味深いところ。
成田空港での会話が、明らかに日本人が喋っていなかったり、エンドロールの最後で音楽が尻切れトンボになっていたりと、映画として若干の詰めの甘さはあるものの、邦画では絶対に出せない映像のクオリティは一見の価値ありで、観ている側を約二時間のノンストップ・パニックフライトに誘う良作。

非常宣言を布告します。
ぶみ

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