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MEN 同じ顔の男たちのsumiccoのレビュー・感想・評価

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
2.9
考察に
個性が出まくりそうなA24作品。

冒頭では
おもしろくなりそうだという期待を抱いて
ラストで
不快&不理解にポカーンとする、が
正常な反応な気もしますけども。


離婚したいと夫に迫るハーバー。
しかし離婚するならば死んでやると脅され
その言葉は現実に。

夫の死後、一人で郊外の屋敷を借りて
傷を癒して過ごそうとするのですが
会う男、会う男、だれもが皆同じ顔をしていて…


「男が同じ顔をしている」は
邦題の副題にもなっているのに
その同じ顔さ加減が超絶妙で
同じ人?違う人?って何度か迷いました。

”どこにでもいるような顔の人”って
多分ああいう顔なんだろうなあ(笑)


イギリス郊外の自然と
歴史を感じさせる建造物を使った映像美も
一見どころか二見の価値はあります。

ただ
モザイクのない出産シーンもどきの描写が
後半畳みかけてくるので…

眉ひとつ動かさずに正面から観られるのは
助産師さんぐらいじゃなかろうか(笑)


以下、あたしなりの考察です。

ネタバレ回避のため、スペースを空けております。





























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なくなってしまった妻の愛を
懇願や脅迫で取り戻そうとする夫や
合意もないのに性的に迫ってくる神父のせいで
男性、女性という性差が目立ちはしますが。

あたしはこの作品
”自殺は誰の責任か” がテーマだと思いました。


家族の自殺はただでさえ
近くにいたなら気づけたのでは、
止められたのでは、と囁かれがちなのに

「俺が自殺するのはお前の愛を失ったせいだ」

これは呪いでしかないと思う。


自分の中の
私が悪いんだろうか、という永遠の問い。

なにかしたら避けられたんだろうか
周りも私のせいだと思っているんだろうか
神はどう思うんだろうか
私の子供はどう思うんだろうか
私は、私を有罪だと思っているんだろうか。

そう自分に問うのをやめられない中で
これまでに相手から
押し付けられてきたあらゆるものが
再現されていたんじゃないかなと。


ちっとも嬉しくないのに
向こうにとっては”お前のため”の優しさ。
日常にさりげなく漏れる女性蔑視。

応えたくない夜の性行為の強要や
拒否したり嫌がったときの理不尽な怒り
従わせるためなら
暴力も愛だと言えてしまう都合のよさ。

いつもそこに潜んでいて
いつでも追いかけてくるような重たい愛。
そして
それを窮屈に思うことや異常だと感じることを
真剣に受け止めてくれない社会。


身近な人に自殺をされた人が
加害者になったり被害者になったりする
脳内工程を見ている気がしたので

相手が同性の親友やパートナーであっても
成立する作品のような気がします。

描きにくくなるとは思いますけどね(笑)
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