ぶたぶー

MEN 同じ顔の男たちのぶたぶーのネタバレレビュー・内容・結末

MEN 同じ顔の男たち(2022年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

あんま怖くないな、美しい風景と静かな音楽で…不穏だけど。と思って見始めた。
ホラーって変質者的な意味で?リアルな方の怖さの話なのか…?と思ったら、『嫌ホラー』だった。
怖いとかじゃなく、嫌。

女性はかなり大多数の人が共感しながら見ると思う。この不愉快さに。それゆえにけっこう賛否両論ありそう。

ハーパーが夫に殴られて激昂してもう2度と会わないと言った回想の次の瞬間の教会での叫び、それが音楽と合わさった瞬間鳥肌が立った。ほんの数秒だったけどゾッとする瞬間だった。なんて言えば良いんだろう。なんて効果的なんだろう。
音楽が素晴らしくよくできているわ。画面と強くマッチしている。不安だ。

村がおかしい系?ミッドサマー系?ハーパー帰った方がいいよ。帰りたくないから来たんだろうけども。田舎って最悪。違うか。最悪の田舎か。

ここまできてよく考えるとハーパー以外に女性がいない。なんとなく感じる居心地の悪さ、気持ち悪さ、この感じは女性なら覚えがある人が多いと思う。というか男女共通して異性に混じってマイノリティになった時のあの居心地の悪さというか。男性も同じような感覚はわかると思う。男女では微妙に差異がある居心地の悪さだと思うけど、絶対に分かり合えなさそうなあの感じ。相手を無意識に下に見ているようなマッチョイズム的な感じ。自分とその意見が軽視されているという不安さと不愉快さ。

終盤のハーパーはピンク色のドレスを着て、より『女性』的である。
完全に真っ暗になるのマジで怖い。

ねえ!!!誰が考えたの!?!?全裸傷だらけ綿毛フーフーオジサン!!イヤ!!
女であるしんどさと性というものに対する嫌悪感、そういう『嫌』さのホラー?男、嫌、男、気持ち悪い。ずっと顔を歪めて画面を見ることしかできない。最悪すぎて泣けてくる。気持ちが悪い。
なにこの嫌マトリョーシカ。イヤリョーシカじゃん。どうやって撮ったのさこれ。折れた足も裂けた手も、夫の死に様と同じ。

求めているものはという問いに「愛」という答えが返ってきた時、思わず乾いた笑いが出た。襲いかかる男たちの執着や攻撃も叫びも、こねくり回されてねじ曲がった「愛してほしい」だったのかもしれん。
ジェームズの背景も分からないし、2人の関係性は詳しくはわからない。でもありふれた男女のいざこざだな。ありふれていて根深い。
まあたぶん斧で打ち砕いたかな、ハーパーは。その男を。

MENというタイトルが本当に全てを表している。
ただこれが男性の全てでないのもまた事実。

親友が妊娠しているというのもまた『男女』というものを考えさせられてなんとも。

解説やパンフを読んでみたくなる。