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NOPE/ノープのtkykのレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.0
映像体験に特化した作品だった。ジョーダン・ピール作品と言えば社会派ホラーというイメージが非常に強いが、本作はそのイメージと異なり、新たな側面を見せていた。

髙橋ヨシキさん曰くシャマランは「ムーを真顔で読む男」らしいが今回のジョーダン・ピールにもこれが当てはまる。特に前半はもろにUFOらしき円盤の存在を匂わせるので、その単純さがかえって真相の不気味さを予感させた。
しかし後半に行くにつれて真相が予想外のものである事が分かると本作が今までにないジャンルの映画であるように感じた。終盤は圧倒的なヴィジュアルと迫力あるチェイスが融合し、独特の見応えがあった。

批評性が無い単純な娯楽作かと言われるとそうでもないのが本作のもう1つの特徴だと思う。色んな感想で既に言及されているように、本作のテーマは「見る/見られる の関係性」だと言える。冒頭のゴーディに始まり、馬やアジア系俳優のジュープは長らくアメリカでは「見られる」側の存在であった。しかもその視線は奇異な存在として消費しようとするものであり、彼らを感情がある存在とは思っていない。それ故彼らを逆撫でするような扱いを平気でアメリカ人はしており、アバンタイトルはその歴史や本作のテーマを象徴するものだと感じた。
そして奇異な存在として見つめる視線は円盤にもそそがれる。円盤に目を向ける事は円盤が相手を敵だと認識する事と同値であり、相手を見つめる視線が双方向的なものであることが顕著に示される。
円盤への視線は「見る/見られる」の関係性とその差別性をカリカチュアしたものといえる。

上記の様な批評性を抜きにしても、上空が不気味に感じられるダイナミックなカメラワーク、広大な風景、そして終盤の圧倒的なヴィジュアルは映画の醍醐味を感じさせた。終始目が離せない良作だった。
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