Finn

ザ・ホエールのFinnのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.0
心不全で余命僅かとなった272㎏の巨大をもつチャーリーは、最期に疎遠となっている娘エリーとの関係を修復しようと試みる。救いとは、正直さとは何かを考えさせられるヒューマンドラマ。

『ハムナプトラ』のブレンダン・フレイザーと『ストレンジャー・シングス』のマックス役でお馴染みセイディー・シンクが親子役で共演。

作中で何度も引用され、本作のタイトルにもなっている「白鯨」がとても印象的。

原作は舞台劇とのことで、ほぼ全編がチャーリーの家の中での出来事だし登場人物も数人なのに、ここまで深く考えさせられる描写ができるのがすごい。
役者さん一人一人のお芝居も素晴らしくて、後半〜ラストは涙が止まらなかった。

チャーリーはエリーに対しても学生に対しても、何度も「正直な気持ちを書いて」と促すけど、考えてみれば登場人物みんな孤独や悲しみ、秘密を抱えてるのに、その気持ちを正直に言えずに生きてきた人ばかり。
更には、それぞれの行動の裏側にある「本当の気持ち」は恐ろしく利己的な部分もあって…。

リズとトーマスがチャーリーを救おうとするのは「自分が救われたいから」でもあるし、ピザ配達のダンがチャーリーに優しく声を掛けるのは、恐らくただ自分の好奇心のためだったはず。
チャーリーがエリーの幸せな人生を願うのは「自分が1つでも正しいことをしたと思いたいから」というセリフもある。

とても複雑な気持ちになるけど、人間なんてみんな少なからずそうだよね。

でも少なくともチャーリーと元妻は気持ちを伝え合うことができたし、チャーリーは最期にエリーに本心を伝えられたし、エリーの涙は本心を語っていたと思うから、そこに救いはあったと信じたい。

ブレンダン・フレイザーは、ハムナプトラが大好きだった子供時代の私のヒーロー!
しばらく姿を見てなかったけど、この作品で改めて存在感の大きさとお芝居に感動しました。アカデミー賞おめでとう!

人を傷つけて試すようなことをしながらも、どこか寂しげで優しさもちゃんとあるエリーは難しい役だけど、セイディーすごく上手だった。

ハッピーエンドなのか微妙だし、とにかく複雑な感情が残るものの、後味は意外とスッキリしてる気がする。
感情が揺さぶられる良作でした。
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