王冠と霜月いつか

ザ・ホエールの王冠と霜月いつかのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

エンディングを先に考えてから、オープニングを書くのが、シド・フィールド流の脚本の書き方です。そう考えると、
エンディングで、チャーリーは、本来歩けない体なのに立って歩いて、白鯨についてのエッセイを読んでいる娘に近づいてた所で、フワッと浮いたような足部のシーンでフェイドアウトします。
オープニングは、バスでやって来たトーマス(タイ・シンプキンス君すっかり大人になりましたね)が、ある事情で呼吸困難になっているチャーリーに頼まれて、白鯨のエッセイを朗読します。ここが対比になっていて、この時点で、既にチャーリー死亡説を説いている方がいらっしゃいましたが、もしかしたらそうかも知れないんですが、それだとちょっと救いが無さ過ぎるので賛成為かねます。

チャーリーは謝ってばかりいます。リズに対しても、娘に対しても、元妻に対しても。
娘がどんな事を言っても行っても、声を荒げる事もなく(諭すことはしても)彼女を受け入れ、視点を変えて、彼女を評価します。

謝るのは、自分の為なのかも知れません。自分の過ちを許して欲しいから他人に謝り続ける。確かに、8歳の娘を残して家庭を捨て、別の恋人の元に走るのは、ちょっと自分には考えられないです。フェイブルマンズの母親に感情移入出来ないのと一緒です。通常ですと、捨てられた方に感情移入してしまいます。でも、
今作だと、娘と元妻にも、感情移入し辛いです。感情がぐちゃぐちゃしてまだ整理がついていません。生々しいです。それが人間なのかも知れませんし、だから、私は未だに独身なのかも知れません(笑)

2023年のアカデミー賞は、1度ハリウッドに居場所が無くなった俳優達の復活の同窓会的な展開が多かったように思えます。主演のブレンダン・フレイザーも、チャーリーのような壮絶な人生を経験してからの最優秀主演男優賞受賞でした。それには素直に拍手を送りたいと思いますし、今作の演技も素晴らしかったと思います。ただ、自分には、(繰り返しますが)まだ整理がついていません。いつの日か、また見返す日が来て、新たな感情が生まれる事を願います。