山浦国見

PLAN 75の山浦国見のレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.7
終始陰鬱な雰囲気の漂う作品。

決して面白い作品ではない。ただ、つまらない作品でもない。

老いは誰にでも平等に訪れる。なので、決して他人事ではない。一秒経てば全て過去。私達は現在にしか生きられないのだ。

老いて死ぬ。それは生きている以上逃れられない運命。その中で人は踠く。未来と言う不確かなものや、過去と言う記憶に縋り付く。

この作品の登場人物たちも例外ではない。様々な形で日常を生きている。プラン75と言う制度を受け入れる者、疑念を抱く者。それが淡々と描かれる。

藤子F不二雄の短編に、定年退食と言う作品がある。この作品に近い内容だ。ただ本作品は、それよりエグい。澱んだ空気が絡み付くような感覚、孤独感に、終始襲われる。

「林檎の木の下で」
ディック・ミネのヒットナンバーだ。映画だと、シコふんじゃった、や、トキワ荘の青春の主題歌に採用されている。

そんな名曲が、倍賞千恵子演じる角谷ミチのテーマ曲的立ち位置で二度登場する。最初は楽しく生き生きと、二度目は絶望や諦めのような歌い方で、ミチが歌う。それが、ミチの心情を表しており、この作品のテーマをも描いているようにも感じる。

今、この時をどう生きるか。
それをこの映画を通して考えてみたいと思う。
山浦国見

山浦国見