りょう

苦い涙のりょうのレビュー・感想・評価

苦い涙(2022年製作の映画)
3.4
 フランソワ・オゾン監督の最近の作品は、少し作風にバラエティがありましたが、この作品は最初に観た2000年の「焼け石に水」に似ている…と思ったら、どちらもライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの戯曲が原作でした。密室の舞台劇のような雰囲気で、そこに好みがわかれそうですが、85分の短尺で観やすかったです。
 よくも悪くも、ピーター・フォン・カントを演じたドゥニ・メノーシェの1人舞台という印象でした。恋愛の独占欲がハンパなく、ある意味で“恋は盲目”を体現したような役柄です。2人の関係性が意味深な使用人への横柄な態度も酷いし、わがままっぷりを気持ちよさそうに演じています。こんな性格の映画監督がどんな作品を制作しているのかも興味ありました。
 ドゥニ・メノーシェは、2019年の「ジュリアン」で演じたDV男が強烈な印象でしたが、こんな容姿ということもあって、まったく共感できない役柄がぴったりです。ピーターの14歳の娘を演じたアマント・オディアールは、まさか本当に14歳とは思いませんが、とても魅力的でした。
 「焼け石に水」のようなコミカルに振りきった表現もあり得たのかもしれませんが、ピーターの暴走をストレートに描かれてしまうと、物語そのものが乱暴な表現になってしまったようで、ちょっともったいなかったです。
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