NaokiAburatani

ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュのNaokiAburataniのレビュー・感想・評価

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どうにも世間というものは昔から物事を黒か白かで分けたがる傾向がある。9.11直後は人々が不安に思っていたということが後押しはしていたというのは理解出来る。が、人という存在は千差万別なはずなのに、一部が目立つとそれを主語にしてしまい、あたかも全体がそうであるかのように思っていないだろうか、と問いかけられた気がした。

物事自体は単純に分けたがるのに、行政や司法の複雑さは非常に厄介だ。端から見てると無実の息子を母親が助けたいのだから帰してあげれば良いじゃないか、と単純に考えられるのだが世界は人の思惑の数だけ自分の想像を遥かに超える複雑さを孕んでいた。あらすじを読んでいた時には、まさかこれだけの日数経過と手順の多さがあったとは思わなかった。

グアンタナモ収容所に関する作中描写は言及と釈放された息子の動作のみでしかなかったが、以前鑑賞した「モーリタニアン黒塗りの記録」を思い出した。恐らく、息子のPTSDは相当なものであろうということは、「暗闇って綺麗なんだな‥」というセリフからも推察できる。

悲惨過ぎる話なはずなんだが、母ラビエのバイタリティー溢れる存在が辛い気持ちにさせ過ぎない絶妙なバランスを保っていた。
少し親切過ぎる人権派弁護士のラビエへの態度が怪しいものを含んでいたような気がしなくもないんだが‥父親の存在感の薄さがそれを加速させていた。

今もなお収容されている人達がいることも驚きだが、人権無視するためにキューバに収容所作るというアメリカの闇の深さの底無し具合にも戦慄した。
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