紅梅シュプレヒコール

モリコーネ 映画が恋した音楽家の紅梅シュプレヒコールのレビュー・感想・評価

4.0
膨大な数の映画音楽を作曲し、多くのアーティストに影響を与えた偉大なるマエストロ、エンニオ・モリコーネの人生を辿るドキュメンタリー作品

父親からトランペット奏者を目指すよう育てられた幼少期から『ヘイトフル・エイト』でのアカデミー作曲賞受賞までの軌跡を、本人と多くの関係者へのインタビューによって辿っていく構成になっています

商業主義的過ぎるという理由でアカデミックな音楽界隈から軽視されていた映画音楽に関わることへの劣等感、罪悪感に苦しんでいた彼が、様々な作品に関わっていくことで映画音楽の芸術性を認めていくまでの紆余曲折は感動的です

彼の映画音楽作曲家としてのキャリアを大きく支える重要な存在として登場するセルジオ・レオーネや妻マリア、恩師ペトラッシとの関係性も素晴らしい

世間からは評価されつつも自身は気に入っていなかったり、逆に自分では最高傑作だと思いながらも正しく評価されなかったりなどの苦悩は、クリエイターだけでなく多くの人が共感できるものなのではないでしょうか

本作を観てモリコーネに対して深く感心したのは、彼が提示するアイデアに難色を示す相手でも作品でしっかりと説得してしまえる実力とその実力の裏には凄まじい集中力があるというところ

やはり凡庸ならざる者には、しっかりと理由がある訳ですね

2020年にこの世を去ったモリコーネですが、劇中で多くの人が語る様に彼の音楽はこの先も生き続けることでしょう

私たちの人生を彩る素晴らしいサウンドトラックの作曲に感謝と偉大なるマエストロの逝去に哀悼の意を捧げます