CANACO

TAR/ターのCANACOのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

トッド・フィールド作品初見。『セッション』の女性バージョンかなと思って鑑賞を始めたら、予想とは違う展開でした。怖さでいえば、指揮者の狂気よりも、キャンセルカルチャーのくだりのほうが人間の怖さが出ているなと感じました。

ケイト・ブランシェット演じる女性マエストロのリディア・ターの半生、栄華と転落を描いた作品。ベルリン・フィルで女性として初の首席指揮者の座に君臨した彼女を取り巻く、オーケストラ関係者の思惑や行動も見どころですが、わりとドロドロしているので、観た後ハッピーになる作品ではないなと思います。

ターの喋りに対する字幕が「だ」「である」なのは初め違和感がありましたが、設定を理解しすぐ慣れました。ターは非常に格好良く美しいです。イケメン指揮者顔負け、というかボロ負け。
ケイト・ブランシェットが演じる前提で書いた完全なあて書き脚本だったらしいですが、権力を手にしたターのエゴと傲慢さや、純粋に音楽を愛するひたむきさまでケイトは演じきり、監督の期待に応えたと思います。努力する天才タイプのターが、内在する悪魔(欲望、悪意)と向き合い、再起まで果たした物語だと思いました。

試写会では、
・この映画をもう一度見たいか。
・ケイト・ブランシェットの演技は怖かったか。
・この映画はハッピーエンドかバッドエンドどちらだと感じたか。
というアンケートが配られたらしく、公式サイトにはエンディングの問いに対する回答結果が公開されています。

トッド・フィールド監督は、「映画をどのように解釈するかについての権利は観客にあると私は考えている」そうですが、ラストについて監督は、非常にポジティブな解釈で製作したようです。フィリピン(実際の撮影地はタイ)シーンのラストは、空想のようにも捉えられるように見せたとのこと。

ラスト、「はっ?」と私は一瞬思いましたし、初見であれがモンハンだったとは気づけなかったのですが、殻を破り自分らしさを取り戻した、勇気ある再起だと感じました。

◾️参照
『「TAR ター」トッド・フィールド監督インタビュー ケイト・ブランシェットは「映画全体を理解する、フィルムメイカーのような視点を持っている』(映画.COM)
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