Oto

TAR/ターのOtoのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.0
映画としての深みに圧倒されて、「もっと奥底まで咀嚼したいからもう一回観よう」と思ったまま、忙しくて1ヶ月以上経ってしまった...。
『バーニング』や『サスペリア』を何度も観に行った学生時代のように、心に残り続ける映画を楽しみきれない身体になってしまったのか。


今でも印象的なこと

・キャンセルカルチャーという時代性(ウディアレンやワインスタインは才能まで断罪されるべきなのか?という命題をしばらく考えてしまった。元は男性指揮者の企画だったらしい)

・TARを悪い人に描かない絶妙なバランス感覚。ひどい!みたいな意見の人もいるみたいだけど、自分にはバッハの論破シーンとかすごく魅力的に映ったな〜。後輩への下心も明確に描いていなくて、オーディションの隙間から見える脚のカットとか完璧

・「発見は全てリハーサルで起こる」とあるように、冒頭インタビューでの思想を伏線回収していく構成。だからこそ準備にあれだけ苦悩する

・ボトムにいた『JOKER』と反対側であるトップから社会を描く。インタビューが冒頭にあるのも終盤の妄想のようなシークエンスもその意識か?

・TARはRATでありART。「日本の文化を悪く描いていない?」みたいな批判があるらしいけど、自分はそう思わなかった。そもそもメインストリームでないところに行ってでも創作を続けるというのはバッドエンドじゃないように思う

・監督も主演女優も引退との噂。やり切ったと思えるような時間がかかる創作物をやり切れるのすごく尊敬。イチャンドンも西川美和もそうだけど、重量のある映画を作るのには本当に時間がかかるんだな...


とはいえ覚えていないことだらけなので、また絶対に見返す。
先輩に勧めたら観に行って感想くれたの嬉しかったな〜。
Oto

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