まるまるまる

生きる LIVINGのまるまるまるのネタバレレビュー・内容・結末

生きる LIVING(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

黒澤版のオリジナルとほぼストーリーは一緒だが、全くの別物に思えた。黒澤版はもがきながら左に右に壁にぶつかりながらも前に進んで行く、老い楽の青春感を感じる力強さと儚さと狂気を孕んだ世界だったように思う。一方こちらは、一人称ではなく、新入社員の若者の目を通して描かれる部分もあり、どこかクールで未来への希望がより強く描かれているように感じた。カズオイシグロならではの茶室でダージリンを飲むような品がそこにあった。オリジナルといえば、葬式のシーンが印象強い。そこには黒澤の日本人の醜い部分や縦割り社会へのアンチテーゼと叱咤激励があった。一方この映画では、主人公が新入社員の若者に宛てた手紙で『我々は後世に残る何かを造ったわけじゃないが、日常に疲れたらあの場所が完成した時の小さな満足感を思い出して欲しい』と伝えるシーンでは前途ある若者に未来を託す希望が込められていた。黒澤自身の遺作である『まあだだよ』で黒澤が自分の後を歩いてくる未来の後輩たちに残した言葉と同じように。全くの余談だが、途中主人公を演じた名優ビル・ナイが友人の彫刻家のN氏にしか見えない瞬間が何度かあってソワソワした😝
まるまるまる

まるまるまる