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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのtkykのレビュー・感想・評価

3.6
結論から言うとどっちにも振り切れていない中途半端な作品だった。主人公がマルチバースで敵と戦うというストーリーだけだとかなりぶっ飛んだ作品になるのかと思っていたし、実際ぶっ飛んだ場面はあるが、終盤はマルチバースにメッセージ性を託した事で冗長に感じ、ぶっ飛び具合も中途半端になっていた。

マルチバースに託したメッセージ性に関してもあまり良いものに思えなかった。マルチバースが「今まであり得たかもしれない自分」のメタファーでありながら結論として「どんな世界線でも結び合う運命」を良き事としているのは自分には受け入れられなかった。
今の自分があらゆる可能性を取捨選択した結果である事を自覚し、それを受け入れて前に進むという展開になるかと思いきや、どんな世界でも必ず一緒になる運命の相手がいるという事を急に持ち出してそれを善とするので結論として必然性が感じられなかった。その上親子に対してもそれを当てはめているので若干の不快感もあった。親子であっても分かり合えない事があるだろうがそういうのを無視して、運命の相手だとするのは血縁主義を強化するようにも見える。

アクションシーンに関しても目新しさが感じられなかった。マトリックスで見たことあるような場面の連続だったし、いちいちスローモーションになるのでテンポが悪かった。

唯一良かったのはマルチバースにジャンプする理屈だった。奇想天外でありながら、理屈は何となく納得できるのがSFとして興味深かった。

本作がアカデミー作品賞かと言われたら首をひねらざるを得ない作品だった。
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