【サンダンス映画祭2021 ワールド・シネマ・ドラマ部門出品】
ブラジルのイウリ・ジェルバーゼ監督作品。シッチェス映画祭コンペに出品され、最優秀ラテンアメリカ映画賞を受賞、サンダンス映画祭にも出品された。
突然出現したピンクの雲に10秒以上触れると死ぬ。そのため外に出られなくなった社会を描く。偶然にもその設定がコロナ禍と似ていると話題になった作品。実際はコロナよりも前の制作であるため無関係なのだが。
ファンタ系映画を予想してみると、あまりにも淡々とした描写に期待外れに思うかも。しかし、アート映画としてみるとなかなか面白い。
もちろんその淡々とした描き方に飽きが来ないとは言えない。もう少し盛り上がりをつけるべきだとは思うのだが、広く人生について考える考察アート映画としてはいい塩梅。
外に出られなくなった恋人の男女二人、一緒に暮らさざるを得ないがその思想の違いが段々と明らかになっていく。その過程を丁寧に描いている。楽観主義者の男、悲観主義者の女、そして外を知らないまま生まれ育つ息子。「死んだときどうする?」という夫婦の対立は身につまされるものがあった。
ピンクの雲というのに設定以上のものはなく、「外に出られない理由」でしかない。そのシンプルさが上手く作用していると思う。単純にその雲の可愛らしい造形がいい。形は可愛らしいが死をもたらすものというギャップの恐ろしさに繋がっている。
シッチェス映画祭に出ているため勘違いする人も多そうだが、れっきとしたアート映画。興味深く、なかなか好みな映画だった。