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DAU. NORA MOTHER(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

DAU. NORA MOTHER(原題)(2020年製作の映画)
3.0
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こちらの番組で本作品について語ってます。観てね~
https://shirasu.io/t/genron/c/ura/p/20211124234526

[幸せになってほしい、少なくとも私より] 60点

ランダウとノラが知り合ったのが1933年、ノラがランダウと暮らすためにモスクワへ移り住んだのが1941年、二人が結婚したのが1949年で、その年の年末に息子デニスが誕生した。そして時は『DAU. Natasha』と同じ1952年、ノラは自身の母リディアをウクライナの田舎から呼び寄せ、久方ぶりに再会を果たす。ランダウは露骨に嫌がるが、朝から晩まで詳細不明な仕事に明け暮れる女好きな夫を支えながら、誰も知り合いのいない秘密研究所に缶詰にされるノラは、知り合いの中で最も融通が利き、同時に最大の爆弾ともなり得るジョーカーを過去から引きずり出してきたのだ。それによって本作品はDAUユニバース版『秋のソナタ』とも呼ばれている。

物語の大半はダウに対して従っているだけのノラと、それに自身の夫(ノラの父)との関係を重ね合わせてノラを"正しい道"へと軌道修正させようと躍起になるリディアの会話に費やされる。リディアは嫌味や皮肉や卑下が多く、ノラのどっち付かずな態度にイライラしては、"はいはい私はあなたにとってゴミ以下なのね"と 娘にぶつけている。被害妄想を延々と語るタイプの面倒臭さがあるものの、母親としてノラを包み込むような優しさも垣間見えるので、映画全体が孤独に苦しめられたノラの空想で、彼女の中の天使と悪魔がリディアとして登場したかのような感覚すら覚えてしまう。

リディアのノラへの愛情、ノラのランダウへの愛情は言葉を発する度に揺れ動く。その様はまるで三角関係を覗き見ているかのようだ。しかし、映画がノラの内的世界のように見えるのは、口数の少ないノラに対してリディアが一方的に状況を説明してしまうことにあり、最終的にはノラの求めるような動きをしてしまうことにある。それこそがノラへの母としての愛情なのだが、動きがほとんどないのに、全体的にヌルめであんまりドラマ性もないので退屈してしまう。

この後、デニスはリディアの家で過ごしたこともあったようなので、少なくともノラとリディアの関係は悪くはならなかったようだ。見返してみると『DAU. Natasha』にはバブバブ時代のデニスを連れたノラがナターシャの食堂を訪れており、こうやってユニバースは紡がれるのかとしんみり(そういうのに激弱です)。
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