YasuoTomimoto

内なる檻のYasuoTomimotoのレビュー・感想・評価

内なる檻(2021年製作の映画)
3.7

原題は「Ariaferma(閉じられた空気)」

①囚人が刑務所という閉じられた空間にいる
②この刑務所から移動(移送)もできない
という、
見捨てられた2種類の意味があるように感じる。

本作の脚本は食べ物に中心的な役割を与えている。
生存のためのエネルギー源であると同時に、
味覚の喜びをもたらすのが食事である。
そして、
食べ物は争いの源にもなりうるが、
争いを収めるのもまた食べ物だ。

嵐が来て停電した。
電気は全て消えた。
ランタンのようなライトで食べるしかなくなった時、
房の中ではなく、
中央に机を出してみんなでご飯を食べて良いか…
と囚人が提案した。
刑務官ガエターノ(ガルジューロ)はそれを許可した。

人と向き合って食事をすることを久しくしていないからこそそれがいかにありがたく楽しいことなのかを感じるのだ

1本のワインを飲んでいいかと囚人は刑務官に聞く。
それを少ないながらもみんなで分けて飲むときの歓声。

古参の受刑者
ラジョーイア
彼が厨房でご飯を作ることを許可された。
人思いで理知的なラジョーイア。

老人の財布を強盗し昏睡状態にした
ファンタッチーニ
老人が回復の見込みがなく裁判にかけられているファンタッチーニ
そんな彼も、
他の囚人を思いやる優しさを持つ。
ボケてお漏らしをした囚人の着替えも思いやりを持って行った。

さながら宴会の様相を呈した食事を通して、
囚人たちに生まれる団結力
机を並べて食べた食事に、
ラジョーイアは「刑務官も一緒に食べないか」と誘った
刑務官もそれに加わる
囚人たちが楽しく話すのを静かに聞きながら時間を共にする刑務官

結局は
刑務官も囚人も同じ人なのだと感じる瞬間


業者が食材を運べず、
ラジョーイアは刑務官ガエターノと庭で食材を集めに行く。
そのときお互いの父親の話に。
今まで私事のことは一切話さなかった刑務官ガエターノも父はすでに他界したことを話した。また「これはインゲン豆と合うんだ」とラジョーイアを手伝って共に食材を集めた。

囚人と刑務官の間にも見えない団結力が生まれたのだと心が熱くなる。

裁判に行くファンタッチーニを
囚人全てが応援して送り出した。

そこに人として大切な何かを感じた。


PS
ラジョーイアが刑務官ガエターノに向かって話す
アリ
働きアリの中にも必ず怠けアリがいるんだと。進化の過程でそれらがいなくならなかったのは、怠けアリにも意味があるからではないか、、と。
YasuoTomimoto

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