ブラウンソースハンバーグ師匠

僕らのままで/WE ARE WHO WE AREのブラウンソースハンバーグ師匠のレビュー・感想・評価

僕らのままで/WE ARE WHO WE ARE(2020年製作のドラマ)
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多様性の要素をふんだんに扱っていながら、その問題解決に焦点が合わない。登場人物はそれぞれの「記号」を持ちながらも、現実社会にコミットする役割を担っていない。置き換え不可能な登場人物だ。
各々が問題を抱えていると分かり合っていながらも、「一緒に頑張ろう」と協力したりもしない。このドラマに親切な人はほとんどいない。思うがまま、無責任に動き続けている。
だからこそ、瑞々しく映る登場人物の姿は、社会への問題提起を向けられるよりも説得力があるように感じた。

新参者のフレイザーは既存のコミュニティから浮いた存在として扱われるも、そこに敵対関係はない。日によって一緒に遊ぶこともあるし、ジメジメと衝突したりもする。帰属意識の薄さと言えばいいのか、とにかくフレイザーのたゆたうような足取りが作品の要のようで、話数を追うごとにこのドラマがどのように帰着するのか全く読めなかった。
また、ファストファッション坊主からしたら、「ハイブランドってこんなに嫌味なく着ていいんだ」と思った。あの、女性の顔が描かれているTシャツ好きや。俺が着たら知り合いから「何のアニメ?」と聞かれてしまいそうだ。

このドラマは子供もおろか、親も無責任に描かれている。子供も親もそのことで度々衝突はありながら、誰も心変わりしない。そもそもこの作品が、善悪に対しての天秤を要請していない。

ナショナルアイデンティティに強く悩むケイトリンの兄貴が一人、祈りを試すシーンはすごい迫力だった。
最終話のブラッドオレンジ回もたまらんけど、個人的には上記がハイライトだった。