マカ坊

ペリー・メイスン シーズン1のマカ坊のレビュー・感想・評価

ペリー・メイスン シーズン1(2020年製作のドラマ)
4.5
激シブ。

粗野で愚直な私立探偵ペリー・メイスン。
心の鎧でもあるレザージャケットと、くたびれたフェドーラハットで隠した未清算の過去が、「子殺し」の嫌疑をかけられたハウスワイフの姿となって改めて彼ににじり寄る。

"真実を突き止め正義を求める"には余りにも心許ない1930年代LAという舞台を、当時の陽光までをも再現したという徹底したデザインセンスで再構築してみせた傑作ノワールドラマ。

スーザン・ダウニーとロバート・ダウニーJr.が10年温めたという今シリーズはとにかくそのスタイルの構築がすごい。

アナモルフィックレンズを備えたSony Venice 6K 3:2フルセンサー(6048×4032)による極めて「映画的」な撮影。

テレンス・ブランチャードによる非常に節度を保った、それでいて即興的なスリリングさも漂う見事なスコア。

エドワード・ホッパーやジョージ・ベローズの絵画を参照したという画面構成やライティング。

あの印象的なケーブルカー「エンジェルスフライト」周辺の雰囲気などを再現したVFXへのこだわりは確実に「フィンチャー以降」のプロダクション。(もっと言えばマインドハンター 以降?)

この辺りの製作に関するエピソードとしては、テクニカラーが新たに開発したリアルタイムかつリモートでカラーグレーディングなどの編集作業を共有できるというアプリ「techstream」を利用し、コロナ禍でのポストプロダクションを出来るだけスムーズに進めたという話も興味深い。

映画でもドラマシリーズでもとにかく何よりも「スタイル」こそが観たい人間としては、今作を貫く「スタイルへの敬意」には大拍手。

ムード。アトモスフィア。やっぱこれでしょう。

お話自体も弁護士ペリーメイスンのオリジンとしてとても楽しめたし、人種や宗教といったイシューへの目配せにも比較的誠実さを感じた。
メインストーリーの面白さの裏で「女に発言させない男達」の愚かさを浮かび上がらせるという構成も意識的。

多くを語り過ぎないストーリーテリングがもたらす余韻は紛れもなく往年のフィルムノワールだが、時折ふっと前景化するバイオレンス等はやはり現代ならではの描写であり、その計算されたバランスもお見事。

個人的にはラストもう少し謎を残して突き放すように終わってくれても良かった気もするけどそこは個人のテイストの問題か。

各キャラクターの魅力も抜群で是非続編を期待したい。

マシュー・リス、ガイル・ランキン、タチアナ・マズラニー他、本当にみんなハマってる。

ラヴクラフトカントリーやらサクセッションやら名作だらけで、HBO MAXが日本できちんとローンチされるまではスタチャンEXから離れられないなこれ…。
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